人工多能性幹細胞(iPS細胞)を眼科領域で応用する臨床研究に取り組む高橋政代氏が、神戸市中央区加納町4のビジネス交流拠点アンカー神戸で講演した。「交流が育むイノベーション~神戸医療産業都市、神戸の成長に向けて」と題し、神戸を拠点に活動を続ける意義を語った。
アンカー神戸の開業1周年を記念したイベント。高橋氏は理化学研究所のプロジェクトリーダーだった2014年、世界で初めてiPS細胞を用いた網膜細胞移植に成功した。19年に退職し、現在、神戸市立神戸アイセンター(中央区)を支えるベンチャー企業「ビジョンケア」(同)の社長を務める。
17年に設立された日本初の公立眼科専門病院である同センターについて、「患者さんのケア、医療、福祉が1カ所でできる施設」と紹介。理研、病院、公益社団法人、企業体が連携し、治療だけでなく、さまざまな角度から視覚障害の課題解決に取り組んでいるとした。
iPS細胞を使った網膜細胞移植は「神戸の医療産業都市構想なしには実現しなかった」と強調。世界トップクラスの研究室である理研の存在や、新しい治療に取り組める医療機関などがある強みを挙げ、「ここにしかない環境が世界初の1例目につながった」と振り返った。
iPS細胞を基にした再生医療は高額な費用が掛かる一方、現状では病院に利益が還元されないという。「ビジネスとして成り立たなければ使われなくなる。仕組みを変え、持続可能な医療にしていきたいと考えている」と語った。(小尾絵生)