兵庫県内の多くの企業で3日、2023年春入社予定の学生らを対象とした採用内定式が開かれた。新型コロナウイルスの流行「第7波」のピークが過ぎる中、見送ってきた対面開催へ3年ぶりに戻す動きが広がった。それでも発言者を絞ったり、オンライン併用を模索したりと、感染対策との両立に工夫を凝らした慎重な再開となった。
「春からの働ける日を心待ちにしています」「誰よりも早く仕事に慣れて、ナンバーワン社員になりたい」
業務用食品卸のトーホー(神戸市東灘区)は3年ぶりに内定者との対面開催に踏み切った。内定者39人の決意表明は、事前撮影の動画投影に。社長を除く役員らのあいさつもスクリーンにメッセージを流す形にとどめた。
コロナの感染拡大で2年前から採用活動はオンライン中心で、内定式も過去2年はオンラインだった。採用担当者は「内定者が交流でき、会社の雰囲気を知ることができる。やはり対面がいい」と強調する。
式では古賀裕之社長が「自ら考え、行動し、成長する人間になってください」と激励。同志社大4年の武市晴花さん(21)は「社長の話を聞き、同期に会えて、入社への実感が深まった」と手応えを語った。
リクルート就職みらい研究所によると、9月1日時点の大学生の就職内定率(内々定を含む)は90・8%で、前年同期と同水準。就職情報会社「学情」の9月調査では、内定式を対面実施する企業は63%と、昨年の35%から倍近くに伸びた。
貨幣処理機大手のグローリー(姫路市)も、全内定者を集めた式は3年ぶり。事前に抗原検査キットを内定者に送り、コロナの陽性者となってもオンライン参加できるよう備えたが、51人全員が来社できた。
採用活動は今年も全てオンラインだったが、新入社員の「会社に行って、会社を直接知りたかった」との声を受け、リアル開催を決定。式の後には会社見学や若手社員を囲んだ座談会も開き、社内や社員と接する機会を設けた。
明治大4年の田村康太郎さん(21)は「同期とやっと会えた。オンライン懇親会で顔と名前は分かっても距離があった。直接話せてよかった」と笑顔を見せた。
内定式を計画した時期は「第7波」と重なり、オンライン開催を続けた企業も。タイヤ大手のTOYOTIRE(トーヨータイヤ、伊丹市)は昨年同様、画面を通じた式典に。だが、来春の入社までに、内定者数人ずつでの職場見学会や若手社員との懇談を計画。担当者は「顔を合わせ、働く意識を高める機会をつくりたい」とした。(大島光貴、広岡磨璃)