神戸連続児童殺傷事件と長崎小6女児殺害事件は「廃棄」で、西鉄バスジャック事件は「永久保存」-。内規で永久保存の定めがある少年事件記録で、少年法改正の契機となったような同じ著名事件でも、保存と廃棄の判断が分かれていた。歴史的な価値があり、国民の財産ともされる司法文書の廃棄は過去も問題になってきた。
3年前の2019年、憲法判断が争われた戦後の民事裁判の記録で、全国の裁判所が多くを廃棄済みだったことが判明した。
民事裁判は最高裁による内規で、判決文を除く記録は原則5年間の保存後に廃棄と定める。ただし、重要な裁判の記録は、少年事件記録と同様に「特別保存」とし、事実上永久保存を義務づける。しかし当時、共同通信が行った調査で、代表的な憲法判例集に掲載された民事裁判記録137件のうち、実に86%に当たる118件の廃棄が分かった。
司法当局は対応に追われ、改善が図られた。永久保存とする記録について「主要日刊紙のうち2紙以上に判決などの記事が掲載された事件」という、いわば「数値基準」も示された。
少年事件記録の保存にこれまで光が当たったことは少ない。全記録の廃棄が分かった神戸連続児童殺傷事件が起きたのは1997年だが、最高裁は取材に、「(当時は永久保存とする)事件記録の選定手順を具体的に定めた運用要領がなかった」と説明。神戸家裁が記録を廃棄した背景事情との認識をにじませた。(霍見真一郎)
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