親の信仰で成育環境をゆがめられたという「宗教2世」が声を上げ始めた。「学校でも家でも居場所がなかった」と振り返る兵庫県尼崎市の女性(53)もその一人。体験を記者に語った。(高田康夫)
■物心ついた頃には毎日集会へ
女性は関東地方出身で、尼崎市に引っ越したのは3歳の時。父親は会社を立ち上げ、毎日仕事で家にいなかった。母親は知人に誘われ、ある宗教団体の信者になったらしく、女性が物心ついた頃には毎日、集会に連れて行かれた。
集会は平日夜と日曜の午前中。土曜には教義の勉強会もあった。集会を休むと何時間も正座させられ、大人たちにたたかれた。小学校の友達と遊ぶ時間はなく、やがて誰からも誘われなくなった。学校では一人、本を読んで過ごした。
■給食や部活でも責められ
6年生の時、信仰で禁じられている食材が給食に出た。担任に申し出ると、「それなら全部食べなくていい」と言われ、教室で立たされた。中学ではバレーボール部に属したが、土日の練習や試合には参加できない。顧問の教師に責められ、親に逆らえない状況を話すとレギュラーを外された。「先生は親には何も言ってくれなかった」。
■今も犠牲になっている子が
高校生になると部活を諦め、親に隠れてアルバイトをした。卒業後、兄と家を出て、ためたお金で古いアパートを借りた。家賃を払うのも大変な暮らしだったが、信仰から解放された喜びが勝ったという。
女性は「振り返りたくない過去。人生の暗闇になっている」と話しつつ、「今も、経済力がなくて親に従わざるを得ない子どもたちが犠牲になっている」と取材に応じた理由を語った。
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「宗教2世」について、神戸新聞社が双方向型報道「スクープラボ」で身近な体験を募ったところ、この女性をはじめ、多くの声が寄せられた。
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