カイシャの顔
(3)新明和工業 ロゴの「May」に込めた海外事業発展への思い
さわやかな5月は英語で「May(メイ)」。社名と掛け合わせたロゴとして「ShinMaywa(シンメイワ)」を展開しているのが、特装車大手の新明和工業(宝塚市)だ。海外での事業展開を見据え、ローマ字の「Mei」で発音を間違えられないよう「May」を採用。ラテン語で「成長、繁殖の女神」を意味する「Maia(マイア)」にも由来する。
旧川西機械製作所に飛行機部が設置されたことが源流で戦後、特装車や航空機、駐車場設備などに事業が広がった。1960年に現社名となり、日立製作所の傘下になったことで62年からはメイワの「m」を日立がロゴで使っていた同じ外枠で囲ったマークを使用していた。色は「紅色」だった。
現行のMay入りロゴは92年4月に使用開始。ただ語呂や意味合いを合わせただけでない。「割と大がかりな取り組みだったようです」と広報部の実平(じつひら)典子部長。横浜にあった営業の企画部門が窓口になり、企画会社とともに制作した。その際、千人を対象にイメージ調査を実施した。
Mayの発案者は日立グループ出身で当時の社長の玉河(たまがわ)晋次さん(故人)。91年の師走に講堂で新ロゴを発表した際、玉河さんは「『あの新明和の製品だ』と認識し、浸透させることが大切」と説いた。書体は明快かつ力強く、今も多くの企業が採用する「ヘルベチカ」。色は独自の調合によるブルー。強調のため「M」を大文字とした。背景の色味や余白の使用法などはガイドラインで厳密に決められているため、社内の利用でも勝手な改編は御法度だ。
同社は2004年に日立グループから離脱。今回、実平部長とともにロゴ関連の資料を探してくれた広報部の原直子さんは「多種多様な事業を展開する新明和クオリティーをお約束する証し。これからも大切にしたい」と話した。
ちなみに原則青色のロゴはわずかに例外が存在する。一つは金色のロゴを使う社章。もう一つは高度な技能や指導力などを認められた技能職を中心に与えられる「特称徽(き)章」の金と銀。社員の誇りとともにロゴがある。(大盛周平)
【新明和工業(宝塚市)】1920(大正9)年、川西機械製作所に飛行機部ができたことが会社の源流。49(昭和24)年に新明和興業設立。2022年3月期(連結)の売上高は2168億2300万円。従業員数(同)は22年3月末時点で5923人。