株価や為替相場などは世界で起きるさまざまな事柄やその見通しの影響を受けます。主要企業の決算発表や業績予想、政治家や経済界要人の発言などが代表的です。
このほかに、国際的な政治の緊張の高まりや、軍事衝突などが相場を大きく動かすこともあります。このような事象によって、ある地域や世界の経済の先行きが不透明になることを「地政学的リスク」といいます。
地政学は大まかに言うと、国の政治的な発展と地理的な条件を結びつける理論のことです。地政学的リスクという言葉は、2002年9月に発表された連邦公開市場委員会(FOMC)の声明に盛り込まれたことをきっかけにして頻繁に用いられるようになったと言われています。
いま、地政学的リスクの代表例として挙げられるのは、イラクやシリアで台頭する過激派「イスラム国」の問題です。
この問題で米国や英国などが中東の一部地域を空爆していますが、情勢の先行き懸念が欧米の株価を圧迫しています。
また、ウクライナ危機に絡んでロシアから欧州諸国への天然ガスの供給に支障が生じたりすれば株価は下落し、逆に原油や天然ガスの価格などは上昇するでしょう。供給に問題が生じるとの見方が広がった段階で、その影響は日本を含めた世界各地の市場に波及していきます。
世界で投資されたお金は株や債券、原油先物、さらに各国の通貨など、いろいろな市場を巡っています。一般的に地政学的リスクが高まると関連する国の株価は下がり、比較的安全だとされる金の価格や関連の少ない国の通貨が買われる傾向にあります。産油国で問題が起きれば原油先物の価格は高騰するでしょう。
国際的な政治の駆け引きや軍事作戦の成り行きを予測するのは専門家でも簡単ではありません。投資する場合は海外ニュースにも目配りをして、不安を感じたら投資を手控え、資金を引き揚げる判断も必要でしょう。