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米国景気の見通し 重要政策迷走なら停滞も

2017/12/06 14:30

 今年の米国景気はおおむね順調に推移しました。トランプ政権の経済政策への期待感などから平均株価は過去最高値を更新し、失業率も改善しました。実質国内総生産(GDP)の伸び率は昨年の1.5%から2%台に改善する見通しで、2018年も拡大が続くとの予想が大勢を占めています。

 ただ、不安要素もあります。新政権が掲げた大型減税などの看板公約はいまだに実現していません。重要政策が迷走すれば政権への失望が広がり、景気の停滞につながる可能性があります。

 米下院は11月中旬に、法人税率の大幅引き下げを柱とする税制改革法案を可決しました。大きな経済効果が予想され、財界や金融市場では早期成立への期待が高まっています。

 ただ、上院は法人税率引き下げの時期などに関して下院とは異なる法案を審議。与党内に減税による財政赤字の拡大を懸念する声は少なくないため、調整が難航するかもしれません。

 同じく公約に掲げる金融分野などの規制緩和も反対論がくすぶっています。また、ロシア政府による大統領選干渉疑惑(ロシアゲート)も捜査が継続中で、政権が揺らぐ事態になれば影響は避けられません。北朝鮮の核開発や中東情勢のなりゆきなど、いわゆる地政学リスクも依然として波乱要因です。

 金融政策も注目されます。2月にも議長が交代する連邦準備制度理事会(FRB)は、引き続き景気拡大ペースに合わせた小刻みな利上げを継続するとみられています。

 ただ、海外からの投資に頼る新興国への影響は無視できません。金利上昇で米国への投資の魅力が高まれば、新興国から資金が引き揚げられ成長が鈍化する恐れがあります。新興国の落ち込みで世界的な景気低迷を招けば、米国経済も悪影響を受けることになりそうです。

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