三田

未完成の兵器工場近く ため池の底に沈む戦争の跡

2021/08/19 05:30

 「戦時中、兵器工場の建設に使ったダイナマイトを捨てたため池がある」。読者から情報提供を受け、現地を案内してもらった。

 太平洋戦争末期、旧陸軍は本土決戦に備えて有馬郡(現・兵庫県三田市)にトンネルを掘り、兵器工場を造ろうとしていた。場所は藍本地区。軍の資料には、国内最大級の軍需工場・大阪陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)の疎開工場として「小型兵器」を製造予定だったとある。

 計画は完遂されず、遺構は今も野ざらしで残る。昨夏、トンネル内を取材した時には、ドリル跡が壁面にくっきり残り、落盤防止の木枠をはめたとみられる規則的なくぼみもあった。ダイナマイトで爆破して掘り進めていたようだが、完成前に戦争が終わった。

 案内してくれたのは三田市の中道久夫さん(70)。藍本との境にある「茶ケ谷池」は7千平方メートルほどで、トンネル跡の近くに位置する。

 「池はこの辺りの子どもの遊び場でした」と中道さん。底には導火線や薬きょうが落ちており、たき火で爆発させて遊んだこともあったそう。戦後、軍が投棄した可能性があるという。

 「元気なうちに伝えておきたいと思って」と連絡をくれた中道さん。今も水量が減る冬には池の底に現れるという。季節が来たら、この目で確かめたい。(小森有喜)

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