少年審判とは全く異なる景色になるだろう。証言台に立つ「元少年」は、多くの「目」に囲まれる。
大法廷での裁判員裁判。一段高い場所に、3人の裁判官と、市民から選ばれた6人の裁判員。向かって左手には検察官と被害者が並ぶ。右手に弁護士が、背後には傍聴人がいる。
2010年に神戸市北区で高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件は、刑事裁判の初公判を待つ。当時17歳で、殺人罪で起訴された男(29)は公開の法廷で裁かれる。
一方、家庭裁判所で行われる少年審判は非公開で、少人数の関係者以外は内容がうかがえない。審判を受ける少年は、裁判官と同じ高さに座り、目線もそろう。審判のやり方だけを見ても、「いかに更生させ、立ち直らせるか」を大切にする少年法の精神がある。
◇ ◇
「手を出されて死んだのに、加害者が誰か、何をされたのかが分からない。何も知らずに生きていけということか」
1996年に、少年による暴行事件で高校生だった長男を亡くした大阪市の武るり子さん(67)は、「被害者」の視点に乏しい少年審判を鋭く批判する。
当時は、事件の内容を知るには損害賠償を求める民事訴訟を起こすしかなかった。提訴に際して、失った息子の命を金銭に置き換えさせられ、心を痛めた。
ほかの遺族と「少年犯罪被害当事者の会」を立ち上げたのが翌97年。少年事件の被害者が置かれる立場を訴え続け、2008年、重大事件の被害者や遺族に少年審判の傍聴を認める少年法改正につながった。
武さんは「遺族は世間から、少年に罰を与えたいだけと思われていた」と話す。長男を暴行した少年は少年院に送られた。どのような処分や刑罰が科されても、息子の命は戻らない。武さんは何より、事実を知る場として公開の裁判を求めた。
1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で5人を殺傷した「元少年A」は、成人になり、自身の半生や事件を振り返った手記「絶歌(ぜっか)」を遺族に断りなく出版した。印税収入を賠償に充てたいと打診したが、遺族は拒否した。
少年犯罪の被害者は、加害者の一方的な主張や賠償を望んでいない。公開の刑事裁判は、被害者にとって、真相究明の場として重い意味を持っている。
◇ ◇
神戸市北区で堤将太さんが殺害された事件の刑事裁判には、将太さんの父、敏(さとし)さん(63)が被害者参加制度の利用を望む。「裁判で(被告を)どこまで追い詰められるかだ」。初公判を待ち、まず動機を問いたいと語る。
今月施行された改正少年法は、18歳、19歳は「特定少年」とし、起訴につながる対象事件を拡大した。
少年審判より刑事裁判。故意に人の命を奪うような少年事件が、法や社会を変えてきた。被害者の存在は、少年法の上でも強く意識されるようになった。
ただ、20歳未満を「少年」とする法の定義は変更されていない。少年の立ち直りや健全育成の精神と、罪の大きさ、被害者の権利。法改正で再び、それらがてんびんにかけられる。(霍見真一郎)
【バックナンバー】
(7)空白期間 「逮捕時28歳」に少年法適用
(6)推知報道 死刑確定、割れた実名と匿名
(5)生育環境 親の自殺や体罰「過小評価」
(4)光市母子殺害 更生より極刑、最高裁が判断
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(2)匿名の森 「会ってもいい」遺族の思い暗転、手記「絶歌」出版で
(1)生存者 連続児童殺傷、厳罰化の契機に 「罰受け償うのが当然」
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