新型コロナウイルス禍でひとり親や貧困の家庭が抱える問題が複雑化する中、母子らの“駆け込み寺”として設立された拠点「WACCA(わっか)」(神戸市長田区)が11月、同区内で移転し、支援を拡充させる。スペースを広くし、コロナ感染を恐れて助けを求められなかった母子を含めて「丸ごと受け入れられる活動」を目指す。(広畑千春)
「私がコロナに感染しても助けてもらえるかも」。兵庫県内で中学2年と小学5年、4歳の3人を育てる30代女性は2020年秋ごろ、フードバンク事業で支援を得ようとWACCAに登録した。
元夫の家庭内暴力(DV)で離婚。見知らぬ土地で看護学校に通いながら再出発した。コロナ禍で誰にも頼ることができず、家計は切迫し、週3日、医療関係の仕事を始めた。子育てや家事を終えてから看護の課題をこなし、寝るのが午前4時になることもあった。
そんな中、長男が友達との関係になじめず学校を休みがちになった。「私の都合で連れて来たせい」と自らを責める女性。学業や仕事で疲れ果てる中、息子の担任教師からの連絡も頭に入らず「どうしていいか分からなかった」という。
WACCAを知ったのはそんな時だった。世間話をするうち、今抱えている悩み、将来への不安を明かした。共感してもらい、自分を責めなくてもいいと思えるようになった。長男との会話も増えた。「こんな場所をもっと多くの人に知ってほしい」と願う。
WACCA代表の茂木美知子さん(70)によると、コロナ禍の影響はひとり親家庭を直撃しており、仕事を失ったり、子どもや同居する親との関係が悪化したりするケースが増えているという。
新しい拠点は同市長田区久保町5にあり、広さは約1・5~2倍に。学習スペースのほか、絵本などを読みながら母子がくつろげる場所やフードパントリーを設ける。
茂木さんは「必要なのはワンストップの支援。傷ついた母親や子どもたちが肩の力を抜いて過ごせ、再び前を向ける手助けができる場にしたい」と話す。
毎月原則第2、4木曜日には、孤立や孤独を感じた女性たちの相談に乗ったり、健康チェックをしたりする「Coco*サロン」を開催。午後1時~3時半、お茶代100円。WACCA TEL078・798・6150
【WACCA(わっか)】母子のシェルターを運営するNPO法人ウィメンズネット・こうべが2013年に設立。母子らの相談などを受けて資格取得や就労に向けたアドバイス、無償の食料配布なども行う。小中学生向けの無料学習塾「WACCA塾」は、これまでに延べ約1万3600人が利用した。