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屋根の青銅のさびた色が印象的な本館=神戸市東灘区住吉山手6
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屋根の青銅のさびた色が印象的な本館=神戸市東灘区住吉山手6

 住吉川に沿って北へ。海を望む高台まで歩くと、ひすい色の屋根が見える。国登録有形文化財の「白鶴美術館本館」だ。

 白鶴酒造(神戸市東灘区)の7代目嘉納治兵衛(1862~1951年)が、自身の古希の記念に設立。約半世紀にわたって集めた美術品を「一人でも多くの方の目に触れてほしい」と1934(昭和9)年に開館した。

 国宝である「賢愚経(けんぐきょう)」をはじめ、青銅器や陶磁器など東洋の古美術を中心に約1450点の作品を所蔵。竹中工務店が設計した純和風建築の本館は、端々に「建物も含めて美術品」という設立者の考えがうかがえる。

 印象的な屋根は、青銅器のさび色。今年5月、神戸の老舗文具店「ナガサワ文具センター」が、屋根や鉄扉の味わいを表現した新色インク「住吉山手ジェイドグリーン」を発売するなど、建物の象徴的な存在だ。

 展示室の大きな窓も、特徴の一つ。展示品の美しさを自然光で見てもらいたいという思いが込められているという。治兵衛の雅号の「鶴翁(かくおう)」にちなんだ鶴の意匠も、照明器具やくぎ隠しなど随所に見られる。

 穏やかな空間が広がる中庭にも、こだわりがちりばめられている。開館当時からたたずむ燈籠(とうろう)は、国宝である東大寺大仏殿前の八角燈籠から直接型を取った。住吉川上流の清水が流れ込む池には、コイがゆったりと泳いでいる。

 戦時中、建物近くに爆弾が落ちたが、不発弾だったため、大きな被害を免れた。「嘉納は建物の外観だけでなく、耐火耐震を重要視し、大切な美術品を守る場所としての役割を望んでいた」と学芸員の海原靖子さん。鶴翁の強い思いが、戦火をくぐり抜け、当時の趣を今に伝えている。(赤松沙和)

〈メモ〉 本館、事務棟、土蔵、茶室が1999年、国の登録有形文化財に。入館は春と秋のみ。秋季展は12月10日まで。月曜休館。10時~16時半。大人800円など。TEL078・851・6001

〈アクセス〉 阪神御影駅、JR住吉駅から神戸市バス38系統「白鶴美術館前」下車すぐ。

【2017年9月28日】

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