宝塚歌劇団花組の若手による公演、バウ・ワークショップ「殉情(じゅんじょう)-谷崎潤一郎作『春琴抄』より-」が13日、兵庫県宝塚市栄町1の宝塚バウホールで開幕した。盲目の娘、春琴に仕える佐助の献身と究極の愛の形を描いた文豪谷崎の名作を基にしたミュージカル。会期を二つに分け、21日までを主演帆純(ほずみ)まひろ、30日~11月7日を一之瀬航季(いちのせ・こうき)が担う。
1995年と2002年に絵麻緒(えまお)ゆう主演で上演、08年にはバウ・ワークショップとして早霧(さぎり)せいなと蓮水(はすみ)ゆうや主演で再演され、いずれも好評だった。
明治時代の大阪。裕福な薬問屋の奉公人、佐助(帆純)は問屋の主人の次女で、琴や三味線の稽古に通う盲目のお琴=朝葉(あさのは)ことの=のお手引き(案内役)が日課。器量よしだが気が強くわがままなお琴への思慕を胸に秘め、献身的に接する。琴の腕前が認められて師匠から「春琴」の号を与えられたお琴に、相弟子の芸者、お蘭=詩希(しき)すみれ=は嫉妬する。
師匠となったお琴に以前から好意を寄せていた大店の道楽息子、利太郎=峰果(みねか)とわ=が弟子入り。しかしつれない態度のお琴は言い寄る利太郎の顔を撥(ばち)で殴りつけけがをさせる。その夜、家に何者かが忍び込み、寝ていたお琴の顔に熱湯を浴びせる。大やけどのお琴は「こんな顔を佐助にだけは見られたくない」と悲嘆に暮れ、その言葉を聞いた佐助は自らの目に針を刺すのだった。
お琴の横暴にひたすら堪え忍ぶ佐助。帆純は大げさな感情表現や身ぶりを抑え、お琴に差し出す手の動き、その足元を確かめる目線のわずかな動きで深い思いを表す。一方、朝葉は気丈すぎて、どこかもろさも感じさせるお琴を、嫌みな印象を与えることなく演じた。
芸者お蘭役、詩希とお琴の母親役、美風舞良(みかぜ・まいら)が話す大阪・船場言葉が上品で滑らか。さらに詩希の所作の美しさが物語に奥行きをもたらしている。ただの「アホぼん」に見えた峰果演じる利太郎が最後に狂気をのぞかせ、残酷なラストを際立たせた。
重く深刻になりがちなストーリーだが、要所要所で披露される日本舞踊が軽やかで美しい。若手にとっては難度の高い演技が要求される演目だが、この究極の愛の物語をこれからも大切に伝えていってほしい。
10月19日、11月2日休演。
(片岡達美)
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