
抗体と光を組み合わせてがん細胞を狙い打ちする「光免疫療法」を開発した米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆さん(60)が、母校の灘中学・高校(神戸市東灘区)で講演した。1980年の卒業以来、42年ぶりに同校の校舎に入ったという小林さん。開発した治療法自体の説明を「詳しくはネットや本で調べて」と横に置き、「英語は迫力と気合だ」などと、世界を相手に続けてきた研究生活のエピソードをにこやかに語った。(霍見真一郎)

がんを狙い撃ちする新しい治療「光免疫療法(光免疫)」について、神戸大病院(神戸市中央区)の医師が語る市民公開講座(神戸新聞社など共催)が30日、オンラインで開催された。手術、放射線、抗がん剤といった従来の治療とは全く異なる光免疫。口やのどなどの頭頸部(とうけいぶ)がんには保険も適用されるため関心も高く、約120人が耳を傾けた。

がん治療に革命をもたらすと期待される「光免疫療法」の新薬が世界に先駆けて薬事承認され、兵庫県内でも治療が始まった。2012年には当時のオバマ米大統領が一般教書演説で紹介。現在、世界各国で臨床試験が進められており、治療法開発を主導した米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆氏(60)は将来のノーベル賞候補とも目される。手術、放射線、抗がん剤-という既存の三大治療とまったく異なるアプローチで、光免疫という言葉には「がんを死滅させる意味と、免疫を作るという意味の二つがある」という。今年4月、西宮市の実家に一時帰国した小林氏に、治療の仕組みや開発の経緯などについて詳しく聞いてみた。(霍見真一郎)