10月31日の衆議院議員選挙に合わせて、最高裁判所裁判官の国民審査が行われます。最高裁は「憲法の番人」と呼ばれ、最近では夫婦別姓や1票の格差訴訟を扱いました。現行の法律を「憲法に違反する」と判断すれば、法律や国民の生活を変える大きな影響力を持ちます。一方、街宣車が駆け回り、候補者の名前を連呼する衆院選の陰に隠れ、過去に辞めさせられた裁判官はゼロ。注目度が低く、制度の実効性を疑問視する声も上がる中、NHKが最高裁裁判官国民審査の特集サイトを開設しました。国民審査の仕組みや歴史、重要な裁判での各裁判官の判断が見やすくまとめられ、SNSなどでも話題になっていました。NHKに特集サイトを作った理由を聞きました。
最高裁判所裁判官の国民審査とは、内閣が任命した最高裁判所の裁判官を国民が審査する制度です。衆院選の選挙権がある人が投票でき、衆院選の投票所で、国民審査の投票も行います。有権者は「辞めさせるべき」と考える裁判官の欄に「×」をつけます。有効票のうち×が半数を超えたら、裁判官は罷免されます。
■「裁判官がどんな判断をしたのかわからないと、審査のしようがない」
ーー国民審査特集サイトを作った思い、狙いはなんですか。
「きっかけは『裁判官1人1人がどんな判断をしたのかわからないと審査のしようがないのでは』という記者の素朴な問題意識です。サイトにもあるとおり、最高裁判所の裁判官は司法の最終的な結論を示し、法律が憲法に反していないかどうか、行政の対応に誤りはないかなども判断するいわば“社会の審判”の頂点に立つ人々です。しかし、その審判をチェックする国民審査については『判断材料が少なく形骸化している』という指摘もあります」
「NHK ではこれまでも国民審査の告示や結果についてお伝えしてきましたし、最高裁の判決などはその都度詳しく報じています。しかし、『審査対象の裁判官がどのような判断をしたのか』という視点でわかりやすく情報をまとめて提供する必要があると考え、少しでも投票の参考になればという思いでサイトを立ち上げました」
■10代、20代の声聞き、デザインに反映
ーー制度ができた経緯、審査のポイント(〇を入れたら無効など)が親切に作り込まれています。工夫した点、力を入れたはありますか。
「国民審査の制度は、例えば『やめさせたい裁判官に×をつける。×以外を書くと投票が無効に』など決してわかりやすいものではありません。貴重な1票を無駄にしないためにも、まずは前提として制度について丁寧に紹介する必要があると考えました」
「また、地方裁判所や高等裁判所と違って最高裁の裁判官は判決で個別に意見を表明できることや、そもそも最高裁がどのような組織なのかもあまり知られていません。そこで、最高裁について解説するコラムも掲載することにしました。サイトには一般の人が足を踏み入れる機会がほとんどない内部の様子や、各裁判官の人柄が垣間見えるアンケートの回答なども掲載しています」
「デザインも力を入れた点の1つです。投票権を持つ若い世代にも関心を持ってもらえるよう、NHKで働くアルバイトの学生など10代20代の若者に『どんなサイトなら見ようと思うか』意見を聞きました。最初の案はもっとポップなデザインでしたが、『最高裁のイメージとは違う』などの声を踏まえて何度も修正し、現在のデザインに決まりました」
■プロフィールや注目裁判での判断内容をわかりやすく
ーー審査対象となる裁判官のプロフィールや、夫婦別姓、1票の格差訴訟での各裁判官の判断など、審査の参考になる情報が盛り込まれています。一方で、情報が多過ぎて見づらい、ということもありません。サイト内の情報量について、意識した点はありますか?
「『裁判を知らない人にも十分な情報をわかりやすく伝える』ということをかなり意識しました。紹介する裁判例も、審査対象の裁判官が関わった判決や決定は数多くありますが、判決時に大きく報道されたもの、SNS の検索状況などから関心が高いと思われるもの、個別意見があり裁判官の“個性”が垣間見えるものなどを中心に30の裁判を紹介することにしました。このうち大法廷で最近判断が示された、いわゆる「夫婦別姓訴訟」と「1票の格差訴訟」は、各裁判官の考え方を比較できるよう一覧にまとめました」
ーーサイト公表後、見た人の反応について教えてください。
「ありがたいことにたくさんの方にアクセスしていただいています。SNS 上では『事件ごとに判断がのっていてわかりやすい』『期日前投票の時点で公報が配布されていないので助かった』などの反響がありました。NHK にもメールなどで同様のご意見をいただいています」
ーーこの特集サイトがどのように役立てられてほしいですか?
「投票所に行く前に一度目を通していただき、参考にしていただければうれしいです」
◇ ◇
NHKのほか、新聞社でも国民審査特集サイトを作っています。記者は期日前投票時にスマホでチェックして、×を入れました。ご参考まで。
※NHK記者が特集サイトを作った経緯を記したnoteも公開されています。
(まいどなニュース・伊藤 大介)
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