社説

斎藤県政始動/「刷新」の具体像を早期に

2021/08/12 06:00

 兵庫県知事選で初当選した斎藤元彦知事(43)が就任して10日余りが過ぎた。行財政改革など公約の実現に向け、知事直轄の部署「新県政推進室」を設置したが、掲げる県政の「刷新」や「斎藤流」の中身はこれからだ。自らのカラーを早めに打ち出し、総務省や自治体での豊富な実務経験も生かして、具体的な成果につなげてもらいたい。

 喫緊の課題は、新型コロナウイルス対策である。第5波の感染が広がり、県内には再びまん延防止等重点措置が適用された。

 感染力が強いデルタ株の収束が一向に見通せない。ワクチン接種の加速はもちろん、病床の確保、保健所の体制拡充など、指摘されてきた課題の改善をどれだけ進め、感染拡大のペースに間に合わせることができるのか。現状を分析し、先の見通しを示す力量が早速問われる。

 感染拡大防止を図りながら、同時に疲弊する地域経済をどう下支えしていくのか。事業者や生活に困窮する人たちへの支援にもさらに力を入れるべきだ。コロナ後を見据え、社会や産業構造の変化を捉えた施策も練り上げていかねばならない。

 財政運営も大きな課題だ。兵庫県は阪神・淡路大震災の影響もあり、貯金に当たる「財政調整基金」が他府県に比べて少ない状況にある。斎藤知事は「約30億円しかない基金は増やすべきだ」と主張する。行財政改革について、今後始まる2022年度当初予算案の編成作業を通して事業をゼロベースで精査し、来春までに一定の方向性を定めるとした。中長期的な財源論議も欠かせない。

 斎藤知事は、自民党本部と日本維新の会の推薦で当選した。維新が大阪で公共施設の廃止、文化・地域団体への補助金削減などを進めてきただけに、県内でも警戒の声は強い。これに対し知事は「兵庫には都市部も過疎地もある。安定と改革のバランスをしっかり図ることが大事だ」と“維新流改革”とは一線を画す方針を強調する。

 また、前県政が基本理念とした県民と共に取り組む「参画と協働」の継承を明言している。副知事の続投や「新県政推進室」の人事などを見ても、調整を重視した無難な滑り出しを意識しているように映る。

 県議会は最大会派自民党の分裂もあり、斎藤知事を支持する議員は少数だ。今後の動向は流動的だが、是々非々の態度で臨んでほしい。

 課題解決には県民の理解と協力が欠かせない。全国で2番目に若い斎藤知事の発信力や行動力に期待する県民は少なくない。その声に耳を傾け、自らの考えを率直に語る姿勢をぶれずに貫けるかどうかが、県政への関心を保つための鍵を握る。

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