社説

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 将棋の藤井聡太六冠=竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖=が、第81期名人戦7番勝負で渡辺明名人を破り、4勝1敗で初の名人位を獲得した。藤井新名人は20歳10カ月で、谷川浩司17世名人=神戸市=が打ち立てた21歳2カ月の最年少名人記録を40年ぶりに塗り替えた。対局後の会見では、謙虚な言葉を選びながらも「指して楽しい将棋が多く収穫が多かった」と自信も漂わせた。

 名人は400年以上続いてきた称号で、1935年に世襲制から実力制に移行した。挑戦者になるには棋士になって最短でも5年かかる。将棋界で最も伝統のあるタイトルである。藤井新名人も幼少時から名人を目標にしてきた。プロ棋士になってわずか7年足らずで夢をかなえた快挙に心からの賛辞を贈りたい。

 名人位の奪取により、羽生善治九段に続く史上2人目、最年少での七冠となる。羽生九段の七冠は25歳のときで大幅な記録更新となった。新名人は今年3月、棋王戦で10連覇中だった渡辺前名人を破り、史上最年少の六冠になったばかりだ。偉業を重ねる姿に感嘆するほかない。

 名人戦4連覇を目指した渡辺前名人は、第3局で1勝を返す粘りを見せたが、19年ぶりに無冠となった。前名人は永世竜王、永世棋王の資格を持ち、タイトル獲得数歴代4位を誇る。巻き返しが期待される。

 藤井新名人は2016年に最年少14歳2カ月でプロ入りし、デビューから無敗のまま史上最多の公式戦29連勝を達成した。17歳11カ月で棋聖を獲得して最年少タイトル保持者となり、22年末には史上最速、最年少で公式戦通算300勝を挙げた。勝率は6年連続で8割を超える。

 特筆すべきは、その驚異の成長ぶりである。人工知能(AI)の活用や実戦の中で戦術を探究し、苦手としてきた戦法がなくなってきた。持ち時間の使い方も巧妙になったと評される。数々の栄冠は、日々積み重ねてきた研さんの結果だろう。

 最年少名人の記録を破られた谷川17世名人は「藤井さんであれば、光栄なことと自然に思えるようになった」と敬意を表した。今年、王将戦の挑戦者となり、新名人とタイトルを争って敗れた羽生九段も「非常にミスが少ない。出来不出来の差が小さい」とその実力を認める。

 八大タイトルのうち、手にしていないのは王座のみとなった。王座戦で藤井新名人が永瀬拓矢王座への挑戦権を得て、前人未到の八冠制覇を成し遂げるか、永瀬王座が5連覇して名誉王座となるか。その前には防衛戦もある。王位戦では佐々木大地七段が新名人に挑戦する。7番勝負の第2局は神戸・有馬である。今後の対局が楽しみでならない。

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