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 農業と食、環境のつながりをエネルギー視点で見直し、持続可能な地域づくりに必要な発想や技術を広げることを目的とした「地エネと環境の地域デザイン」事業が4月スタートしました。これまでに農業や食品産業、下水道から出る有機物のごみの有効利用を考えるバイオガスシンポジウムを開催。地域のバイオマス資源である「竹」や「農業でのソーラー利用」をテーマとした「地エネ&農食ツアー」も実施しました。本年度はこのほか、里山資本主義を学ぶツアー、子どもたちの農業・エネルギー体験、自然エネルギーと防災のイベントなどを開催していきます。


7アールのナス畑に、日照に応じて水を供給するソーラー=加東市
7アールのナス畑に、日照に応じて水を供給するソーラー=加東市

天候に応じ自動給水

▽夏の水やりから解放

 農業にとって最近の夏の猛暑は大きな負担となっている。人も作物も進行する地球温暖化への対策が求められている状況だ。そんな中、太陽のエネルギーを農業でもっと活用しようという技術も出てきた。
 野菜産地で広がる太陽光発電を生かした自動水やり装置もその一つ。
 ソーラーの電気で水路などからくみ上げた水を畑に巡らせた点滴チューブで送る。ユニークなのは、降り注ぐ太陽光の量を、水量の制御システムに連動させている点だ。曇りの時は供給は少なく、雨の日や夜は稼働しない。
 兵庫県内では豊岡市但東町など但馬のピーマン産地から広がり、他の野菜産地でも導入が始まっている。
熱中症の危険もある過酷な真夏の水やり作業から人を解放し、空いた時間をほかの作業に充てられる。また、人が行っていた水やりのむらがなくなり、導入前よりも4割も野菜の収穫量を増やした人もいる。
 太陽光発電を使った装置なので電源のない農地にも安価に設置できるのも魅力だ。花や果樹の栽培にも活用できるという。
 加東市山国の宮野正幸さん(65)は、JAみのり(加東市)の支援を受けて、2年前から加東市特産のナスの栽培に取り入れた。「真夏の水やりの手間がなくなるのはありがたい。太陽を生かすのが自然の理にかなっている」と評価する。
 20ワットの小型のソーラーパネルの電力で7アールの畑にある320株に水を届けられる。1日当たり1株に5リットルもの水を供給する。装置の費用は15万円ほどという。「さらに水の供給法などの研究を重ねて、生産性向上につなげたい」と話している。


太陽光発電と農業を両立するソーラーシェアリングの畑=宝塚市内

陽光抑制し品質向上、収量増

▽農地の上にパネル設置

 田畑に降り注ぐ太陽光を最大限活用する技術として脚光を浴びるのが「ソーラーシェアリング」。農作物の多くが太陽光の6~7割しか必要としないという植物生理学の知見を基に、農業と太陽光発電を両立しようという技術だ。
 太陽光の3割を発電に利用できるよう農地の上空にパネルを設置する。地表に届く残りの7割の光で農作物は従来通り育つ。
 注目されるのは、農業で大きな課題となっている地球温暖化に対抗する技術としての可能性だ。
 近年は日照りや高温による日焼けや品質低下などの農作物被害が増えている。
 一方、ソーラーシェアリングを導入した農地では、パネルの影で過剰な太陽光が抑制されることなどから、葉物野菜の品質向上や豆類の収量増加などが全国で報告されている。
 兵庫でソーラーシェアリングの普及が進んでいるのが宝塚市北部の西谷地区だ。6カ所で整備され、今年2月には普及を向けて生産者らが一般社団法人西谷ソーラーシェアリング協会を設立した。
 5月には収穫した野菜などを販売する「まちかど農園 POSTO」が宝塚市野上1の阪急逆瀬川駅近くに開業した。「ソーラーシェアリングの良さを多くの人に知ってもらいたい」と同協会はアピールする。

ボイラー用の竹チップ加工を見学するツアーの参加者ら=淡路市

「竹資源化」「ソーラーシェア」県内先進地で見学ツアー

 自然エネルギーや環境をテーマに「地エネと環境の地域デザイン実行委員会が」企画したツアーが兵庫各地で開催されている。
 6月には、乳酸菌素材や燃料として注目されている竹について学ぶツアーが実施された。
 竹はかつては日用品の原料として盛んに利用されたが、最近は手入れずに拡大する放置竹林が各地で問題となっている。一方で、旺盛な成長力を持つ無尽蔵のバイオマス資源として注目され、新たな用途を開拓して利用する動きも広がる。
 参加者は、竹チップや竹粉を生産する杉本林業の施設(淡路市)を見学し、竹チップにボイラーを使うウェルネスパーク五色(洲本市)を訪れた。
 その後、超微粒子の竹パウダーの製造装置を生産・販売する宝角合金製作所(姫路市)で、お茶の原料から消臭・抗菌、土づくり、但馬牛の飼料などに活用される竹パウダーの魅力を学んだ。
 7月には、太陽光発電を有効利用する農業の現場を訪ねるツアーが催された。
 兵庫県立北部農業技術センター(朝来市)で、参加者は野菜産地などで広がるソーラーパネルを活用した自動水やり装置について講義を受けた。
 午後は、農業と太陽光発電を両立するソーラーシェアリングが普及する宝塚市北部の西谷地区を訪問。導入した生産者から豆類などは収穫量が増えることや、パネルの影ができて夏の作業が楽になることなどの説明を受けた。

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太陽光発電と農業を両立するソーラーシェアリングの畑=宝塚市内

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ボイラー用の竹チップ加工を見学するツアーの参加者ら=淡路市

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