農林業と食、環境のつながりをエネルギーの視点で見直し、持続可能な地域づくりに必要な発想や技術を広げる「地エネと環境の地域デザイン」実行委員会は、里山資本主義の現場を訪ねるツアーを開催した。参加者は人工林の間伐材を活用した燃料用チップの生産現場や、里山の手入れの際に処理に困る枝や竹から炭を作る無煙炭化器の実演などを見学した。このほか、自然エネルギーと防災をテーマとした体験イベントを開催。いざというときに頼りになる自然エネルギーを使う技術や機器が会場を訪れた人の関心を集めた。

不要の枝や竹を無煙炭化
里山資本主義をテーマとしたツアーには約40人が参加。最初に西宮市北部の里山などで養蜂を営む大東義弘さんと家族らで経営するレストラン「ハニーガーデンカフェ」を訪問した。
大東さんが木々を利用している里山を案内し、ミツバチが蜂蜜を集める花が咲く木や原木シイタケ生産に活用する木などについて話した。
その後、大東さんは里山の手入れの際に出る枝などを有効利用する無煙炭化器を実演した。参加者は燃え出すと煙が出なくなる様子に見入りながら、煙が出ない原理や炭になるまでの時間、処理できる木の量などについて盛んに質問していた。大東さんは「できた炭は畑の土壌改良やバーベキューなどに使えます」などと利用法を紹介していた。
昼食はハニーガーデンカフェで鹿肉と野菜をたっぷり使った「薬膳鹿肉カレー」を味わった。鹿肉は近年、低カロリー高タンパクで、鉄分も豊富なジビエ食材として注目されている。鹿による農林業の食害が深刻化する中、駆除した鹿を有効活用する動きも広がっている。肉の適正に処理する施設も増えて、良好な状態の肉が手に入りやすくなっている。


間伐材、もみ殻も燃料に
その後、参加者は豊富なスギ・ヒノキ人工林の建築材生産とともに間伐材などの燃料利用が盛んな北播磨の多可町加美区に移動した。その中核となっている北はりま森林組合で、兵庫県内でも増える木質バイオマス発電所向けのチップや薪(まき)の生産・供給状況について聞いた。
薪ストーブを着火する際などに使う「たきつけ君」としても販売されている間伐材チップの製造現場なども見て回った。
さらに、同区内の箸荷営農組合で、もみ殻から作る木質燃料「モミガライト」の生産施設を見学した。
お米を包むもみ殻は収穫する際に全国で年間200万トン発生するとされるが、有効な利用法が乏しく、用途開発が日本農業の大きな課題となっている。
もみ殻を粉砕して熱で固めて製造するモミガライトは燃焼後の灰が田んぼの肥料にもなり、農業の未利用資源として注目されている。
参加者は、一般の薪に比べて火持ちが良く、長期間の保存が可能なことなどメリットについての説明を受けた。

災害時にも自然エネルギーお役立ち
▽高校生がワークショップ開催 太陽光調理器を手作り
災害時にも活躍する自然エネルギーを使う発想や技術を学ぶ「防災&自然エネルギー ~災害に強い地域づくり」と題する連続イベントは神戸市内3カ所で開催された。
神戸市中央区ハーバーランドの「カルメニ」1階の神戸新聞まつり会場では、市立神港橘高校の生徒らによるワークショップ「ソーラークッカー(太陽光調理器)を作ろう!」が開催された。
ソーラークッカーは、太陽光を反射させて熱を効率よく集める調理器具。電気もガスも燃料も必要なく、晴れた日に日当たりのよい場所ならどこでも利用できる。災害時に不足するお湯が沸かせ、煮込み料理やホットケーキ作りなども十分に可能だ。
参加した子供たちは高校生らの指導を受けて、100円ショップなどで販売されている手軽な材料でソーラークッカーを製作。ちょっとした工夫で身近なエネルギーが簡単に得られることを学んだ。
同区の東遊園地での食都神戸デ―では「地エネと環境の地域デザイン実行委員会」が里山資本主義の体験ブースを設置。街路樹のせん定枝などを炭にする無煙炭化器を実演した。
段ボール紙や小枝などで火をおこし、太めの枝で炭を製造。できた炭を七(しち)輪(りん)などに移して、焼き鳥や焼き魚を調理する様子に多くの人が見入り、盛んに質問していた。
▽神院大生 もみ殻燃料で災害食調理
西区の神戸ワイナリーで開かれた「こうべ地域のたべもの祭り」では、神戸学院大学の防災女子とともに、もみ殻から作る燃料「モミガライト」を使った災害食調理が披露された。
防災女子は防災啓発活動に取り組む学生グループで、女性の視点を生かしたさまざまな提案を打ち出している。
メンバーは、モミガライトを燃料にした薪ストーブの上に水を張った鍋を置いてお湯を沸かし、米や水などを入れたポリ袋をつけて、できたごはんを舞台で披露した。会場を訪れた人たちは試食しながら非常食の作り方を学んだ。
このほか、食とエネルギーの地産地消や防災の取り組みが展示で紹介された。