2021年10月、兵庫県尼崎市のマンション敷地内で医療事務員の女性=当時(28)=を刺殺したとして、殺人と銃刀法違反罪に問われた元夫の男(33)=西宮市=に対する裁判員裁判の初公判が21日、神戸地裁(小倉哲浩裁判長)であった。男は起訴内容を認め、「幸せそうにしていて腹が立った。積もり積もったものがあった」と述べた。
起訴状などによると、元夫の男は21年10月15日午後8時20分ごろ、尼崎市昭和通4のマンション駐輪場で、女性を牛刀(刃体約18センチ)で多数回突き刺すなどし、左鎖骨下の動脈を切断するなどして殺害したとされる。
冒頭陳述で検察側は21年3月、男が尼崎市のコインランドリーでトラブルを起こして警察を呼ばれたことがきっかけとなり、同年4月から2人は別居したと説明。男は別居解消を求めたが女性は拒否し、同年6月に離婚した。
その後、男は女性が誕生日を祝われる様子を記したツイッターなどを見て腹を立てていたと指摘。事件当日、通信アプリ内で知人らとオンラインゲームを楽しもうとするやりとりを見て、幸せそうな女性を殺害しようと決意した-とした。
一方で弁護側は起訴内容を再度認めた上で「身勝手で取り返しのつかないことをしてしまったと反省している」などと、量刑への考慮を求めた。
弁護側の被告人質問では、男が離婚前にも、危害を加えようと女性の実家を訪れていたことが判明。検察側が殺意を抱くまで腹が立った一番の理由を尋ねると、「ある日、突然出ていって連絡が取れなくなったから」とした。また、裁判官からは男の「積もり積もった」という言葉の意味を問われ、「最後まで面と向かって話せなかったこと」と答えた。