生命力あふれる黒人母子像などで知られ、兵庫洋画壇の重鎮だった中西勝さん(1924~2015年)の記念館「無字庵」が6日、神戸市東灘区鴨子ケ原3の旧自宅にオープンする。初期から晩年までの絵画約100点のほか、創作に影響を与えた海外の民芸品も展示する。5日、関係者による内覧会があった。
中西さんは大阪市生まれ。1949年に神戸市立西代中学校の美術教諭となり神戸に移住。72年、代表作「大地の聖母子」で画壇の芥川賞ともいわれる「安井賞」を受けた。二紀会でも活動し、常任理事などを歴任。大地に根を張って生きる人々のたくましさを好んで描いた。
「ついのすみかを記念館に」という遺志を継ぎ、遺族らが開館準備を進めていた。館名はモロッコの言葉で「ええなあ」を意味するという「ムジアン」から名付けた。
肖像画のほか、「マラケシの男」(73年)など、お気に入りだったモロッコを題材にした作品や、旅行で訪れたメキシコの伝統文化に触発された作品、晩年に明るい色彩で描いた母子像などが並ぶ。アトリエのほか手作りの石垣や庭木なども見学でき、生前の中西さんの暮らしぶりを垣間見ることができる。
中西さんのめいの夫で同館を運営する粂川穣さん(79)は「こういう場所から中西の作品が生まれたということを多くの人に知ってほしい」と話す。入館無料。開館は金土日曜と祝祭日の午前11時~午後5時。28日~1月9日は休館。同館TEL078・811・8118
(金井恒幸)