阪神・淡路大震災から25年となる来年1月17日に、兵庫県宝塚市が除幕する震災犠牲者の追悼の碑で、被災して亡くなった市民計118人のうち、2割弱に当たる21人の遺族が故人の名前を刻むのを望まなかったことが16日、分かった。「もう忘れたい」「名前をさらしたくない」などの理由が伝えられたといい、同市は遺族が希望した人の名前だけを碑に記す考えだ。(小谷千穂)
同市によると、ほかにも犠牲者118人の約2割に当たる25人の遺族に連絡が取れず、震災から四半世紀近くになり、遺族の意向確認すら難しい実態も浮かんだ。こうした遺族の意向が分からない人も除いて、市は全犠牲者の約6割、計72人分を碑に刻銘する。
市が新たに設ける追悼の碑は「ゆずり葉緑地」(宝塚市小林西山)に建てられ、来年1月17日に除幕される。遺族の要望を受け、「犠牲者が宝塚で生きた証を残し、震災を次世代に伝える」目的で計画された。建設費の約135万円は全額市民らの寄付で賄われる。
碑は、白御影石の本体と台座からなり、高さ約1メートル、幅約1・35メートル。表に追悼文を記し、裏面に犠牲者の名前を彫る。
同市は震災で亡くなった市民118人の親族に、郵送や電話で意向を確認。72人の遺族が刻銘を望んだが、21人の遺族が希望せず、25人の遺族は転居などで連絡できなかった。碑には118人全員分のスペースを設けており、現在は刻銘しない方針の46人も遺族が希望すれば追加できる。
遺族への意向確認は、神戸市中央区の東遊園地にある「慰霊と復興のモニュメント」(2000年完成)の銘板や、西宮市の西宮震災記念碑公園にある「西宮市犠牲者追悼之碑」(1998年完成)の刻銘でも行われた。
神戸市は市民と市内の犠牲者を対象に遺族に問い合わせ、了承を得た4517人を銘板に記した。数人は連絡が取れなかったが、了承を得られなかったのは約70人で全体の2%だった。西宮市は市内の犠牲者1146人のうち1079人の遺族が刻銘を希望し、全体の6%、67人が辞退した。
これに対し、宝塚市が震災25年を前に行った聞き取りでは、刻銘を求めない遺族は全体の2割弱に上った。市によると、刻銘を望まない遺族からは「遺族が日々祈るだけで十分」という声があった。一方で、希望した遺族は「大好きだった宝塚に名が残り、本人も喜ぶ」「名前を見てもらい、亡くなった人の話ができる」などの理由を挙げた。
担当する宝塚市秘書課は「さまざまな思いがある中で、一人一人の遺族の思いを尊重しながら柔軟に進めた」としている。