今年の将棋界は棋王を除く八大タイトル保持者が入れ替わる激動の年となった。中でも、豊島将之を破り、46歳3カ月の史上最年長での初タイトルとなる王位を獲得した木村一基が将棋界を超えて大きな話題に。さらに、数々の記録を達成してきた羽生善治、藤井聡太、女流棋士の里見香奈が新たな記録をそれぞれ打ち立てた。(金井恒幸)
□「受け師」の底力
「受け師」の異名を持つ木村は9月の王位戦(神戸新聞社主催)で、有吉道夫が持つ最年長記録(37歳6カ月)を大幅に更新。それまで出場した6度のタイトル戦でいずれも敗れ、7度目で悲願をかなえた。
常に周囲への気配りを忘れず、解説での軽妙な語り口から多くのファンに愛され、「将棋の強いおじさん」の愛称もある木村。長年の夢をかなえ、終局直後の取材に言葉に詰まり、涙を見せた場面は多くの人々の感動を呼んだ。
□タイトル集中化
昨年は一時、八大タイトルを8人が有する群雄割拠の時代を迎えたが、今年は集中化が進み、木村を含めた4人で分け合う。
破竹の勢いを見せたのが渡辺明だ。2月に久保利明から王将を奪うと、3月に棋王を防衛。7月に豊島から棋聖を奪い取り、6年ぶりに三冠となった。
豊島は“乱高下”した。5月に佐藤天彦から名人を奪取し三冠を有した。その後、棋聖と王位を立て続けに失って一冠になったが、12月に広瀬章人を破って史上4人目の「竜王・名人」となった。
永瀬拓矢は二冠に。高見泰地を下して初タイトルとなる叡王を5月に獲得し、10月には斎藤慎太郎から王座を奪った。
□記録の数々
羽生は6月、王位戦リーグでの勝利で1434勝となり、大山康晴の公式戦最多記録を塗り替えた。3月にはNHK杯戦で11回目の優勝を飾り、タイトル戦を除く一般棋戦の優勝回数も大山を追い越して最多の45回となった。
一方で八大タイトルの挑戦はならず、あと1期に迫る前人未到のタイトル通算100期の達成は来年以降に持ち越された。
高校生プロの藤井は2月、朝日杯オープン戦で羽生に次いで同棋戦史上2人目の2連覇を果たした。公式戦連覇は最年少。ただ、勝てば史上最年少のタイトル挑戦となった王将戦は挑戦者決定リーグ戦最終戦で敗北。記録達成が可能な棋戦は棋聖戦のみとなった。
女流棋界では、里見が女流七タイトルのうち史上初の六冠を成し遂げた。6月、渡部愛(わたなべまな)から女流王位を奪還して五冠となり、9月の清麗戦を制した。13年に女流棋界初の五冠を達成したが、体調不良による休場もあり、一冠まで後退した時期もあった。
6月にはプロ公式戦で男性棋士に4連勝し、女流最多記録も達成した。

											
											






