感染が急速に拡大する新型コロナウイルス。中国・武漢市滞在者と接触した二次感染者からさらに広がる「三次感染」の可能性も指摘される中、兵庫県内の観光地のホテルや各施設も対応に追われている。「終息が見えず、影響の広がりも予測がつかない」。関係者は歯止めがかからない現状に頭を抱えつつ、利用者の不安を解消するためチェック体制を整えたり、従業員のマスク着用を徹底したりしている。
訪日外国人が多く足を運ぶ神戸市北区の有馬温泉。旅館「陶泉御所坊」では25日から、チェックイン時に宿泊客の発熱や体調不良の確認を始めた。日本語や英語、中国語(簡体字と繁体字)、韓国語で書面を用意し、署名を求める。
周辺の旅館も同じ書面を使っており、御所坊当主で有馬温泉観光協会の金井啓修会長(64)は「極端に不安になってはいけない。皆さんに安心してもらえるように取り入れた」と話す。ただ、御所坊では感染が広がり始めてから2割ほどキャンセルが出たといい「なんとか桜の咲く季節までには終息を」と願う。
同様に感染防止に取り組むホテルや旅館は多い。豊岡市の城崎温泉では29日から、組合に加盟する旅館で発熱と呼吸器の異常がある場合は申し出るように伝える書面を英語や中国語などで記した。洲本市のホテルニューアワジでは、従業員に手洗いやアルコール消毒を徹底させる。
神戸市中央区の神戸ポートピアホテルでは、中国人団体客の予約解除が相次ぎ、29日までの3日間で580人のキャンセルが発生。フロントとレストランで勤務する従業員には初めてマスク着用を義務付けたといい、担当者は「感染拡大が続くと、キャンセル数も増加してしまう」と表情を曇らせる。
観光施設も対策を講じる。東アジアからの利用も多い鳴門海峡の渦潮観光船「うずしおクルーズ」。運航するジョイポート南淡路(南あわじ市)は、切符販売窓口にアルコール消毒液を設置し使用を促す。
外国人に人気の世界文化遺産・国宝姫路城でも予防に細心の注意を払う。多くの人が触れる階段の手すりを1日7回ほど消毒する。姫路城管理事務所の担当者は「去年と比べて、今年の1月は観光客が多かった。外国の人と接触する機会が多い場所なので、スタッフも手洗いなどで健康管理を徹底したい」と話した。(まとめ・篠原拓真)