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小学校と幼稚園だった建物を改修した劇場の前に立つ劇団「鳥の劇場」代表の中島諒人さん。「演劇をより身近なものに」と地域住民と歩む=鳥取市鹿野町鹿野
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小学校と幼稚園だった建物を改修した劇場の前に立つ劇団「鳥の劇場」代表の中島諒人さん。「演劇をより身近なものに」と地域住民と歩む=鳥取市鹿野町鹿野
空き地でも演劇が繰り広げられる「鳥の演劇祭」の様子=同(「鳥の劇場」提供)
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空き地でも演劇が繰り広げられる「鳥の演劇祭」の様子=同(「鳥の劇場」提供)
「シアター・オリンピックス」の野外劇場の舞台=富山県南砺市(富山県利賀芸術公園提供)
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「シアター・オリンピックス」の野外劇場の舞台=富山県南砺市(富山県利賀芸術公園提供)

 巨大な古代ギリシャ風の野外劇場。一斉に花火が打ち上げられ、埋め尽くされた客席から歓声が上がる。富山県南砺市利賀(とが)村。そこには、兵庫県豊岡市の神鍋高原の住民一行の姿もあった。

 面積の9割以上が森林で、人口500人にも満たない地域。昨年8、9月、日本とロシア共催で開かれた国際演劇祭「第9回シアター・オリンピックス」の会場の一つとして、米国やアジアなど16の国・地域から30作品が上演され、国内外から約2万人が訪れた。

 豪雪地帯にある合掌造りの集落で演劇祭が始まったのは1982年。演出家鈴木忠志が主宰する劇団「早稲田小劇場」(現SCOT)の拠点を移したのがきっかけだった。毎年、多くの演劇人が集う“聖地”となっている。

 神鍋高原の住民たちが訪れたのは、民宿を中心に多くの宿泊施設が並ぶ地元に、今年から本格開催される「豊岡演劇祭」の来場者を引き込むための視察だった。

 日高神鍋観光協会の岡藤泰明会長(61)は「盛り上がりに圧倒された」と驚く。しかし利賀村には宿泊施設がほぼなく、テント泊をする来場者も目立った。岡藤は「豊岡演劇祭では神鍋高原の地域資源を活用できる。大きなチャンス」と期待する。

     ◇

 「全国で点々と活動する劇団や活動を線で結ぶことができれば、大きな人の流れが生まれ、観光へと発展していく」

 鳥取市郊外で元小学校の体育館を改修した劇場を拠点に活動を続ける劇団「鳥の劇場」代表の中島諒人(53)=同市出身=が語る。

 東京で劇団を主宰していた中島は2006年、「地域と演劇の在り方を追求したい」と移住。約20人の劇団員と共に、演劇を生かした町おこしなどを続ける。同劇団が「地域の異物」から「当たり前の存在」に変わったのは最近のこと。そこに至るまで、ワークショップや地域の運動会などで地元住民と交流を重ねた。

 昨秋には12回目を迎えた「鳥の演劇祭」を、日中韓が連携した演劇祭「ベセト演劇祭」の日本会場として開き、国内外のファンを集めた。豊岡演劇祭との連携も期待する。

 18年には劇場近くの小中学校が統合されて義務教育学校「鹿野学園」となり、劇団員が講師を務める特別カリキュラム「表鷲(あらわし)科」が組み込まれた。

 演劇を用いた教育は豊岡市でも始まっている。それは、子役を育成するためではない。=文中敬称略=

(石川 翠、末吉佳希)

 

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