新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国湖北省武漢市。同市に拠点を構える日本企業に所属する兵庫県出身の男性駐在員がこのほど、神戸新聞社の取材に応じ、「(まちは)異様な雰囲気」と、現地の状況について語った。
男性によると、市内では全ての公共交通機関が休止しており、高速道路も封鎖。人口約1100万人の大都市だが、ほぼ人影はなく、バスやタクシーの姿も見られず、行政から許可を受けた物資輸送のトラックが走っているのみという。
本来なら春節に合わせて多くの人が故郷である同市を訪れるが、男性は「新型肺炎のうわさが広がり、さらに交通封鎖によって帰省できなかった人が多いようだ」と話す。
市民の多くが自宅にこもり、商店もほとんどが閉まっているため、まちは「シーンとした異様な雰囲気」。たまに見かけるのは、徒歩や自転車で食料品を買いに行く人だけという。
最近は感染者がさらに増え、一般道にも警察官が立って封鎖を始めた。男性は「近くの店にも行きにくくなった」とこぼす。
一部の開いている小売店には、開店前から多くの人が食料品を求めて集まる。カップ麺や野菜、菓子、パンなどは早くに完売。アルコール除菌の関連商品やマスク、生理用品などは品切れのケースがほとんどという。
スーパーなどの入り口には消毒液が置かれ、入店する人は必ず手に塗り込む。中には服やかばんにも噴射する人がいる。男性は「自宅で子どもが退屈しているのか、おもちゃを買う人も多くいた」と証言する。
「中国政府が発表する死者、感染者数が増え続けており、不安だ。一日も早く収束してほしい」。男性は切実な思いを口にした。