北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さん=失踪当時(23)=の母、嘉代子(ありもと・かよこ)さんが3日、亡くなりました。嘉代子さんは、2002年11月、神戸大であった講演会で、拉致された恵子さんへの思いを語っていました。記事を再掲します。
◇ ◇
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本人拉致事件で、北朝鮮から死亡と伝えられた有本恵子さん=拉致当時(23)=の母嘉代子さん(76)が十日、神戸大の大学祭で講演し、約百人の学生や一般参加者を前に「子どもが帰ってくるまで元気に頑張りたい」と語った。
同大のサークルが企画。恵子さんが英国留学後に行方不明になって以来、「国や警察への働き掛けなど、口では言い表せない苦しみを味わった」という嘉代子さん。それだけに「死亡」が伝えられたときは「血の気が引き、涙も出なかった」という。
しかし、後日知らされた死亡日や死因とされる二酸化炭素中毒について、先月帰国した五人の生存者などの証言から信ぴょう性に疑問を持ち「恵子は死んでいるとは信じていない」と述べた。
会場の学生から「活動の原動力は」との質問に、「帰ってきたときに元気でいなかったら、子どもが寂しい思いをするはず。家族会や支援者の心の支えも大きい」と話し、「日本政府が一歩も引かず交渉してくれて感謝している。みんなが帰って来るまで頑張りたい」と訴えた。
聴講した男子学生(22)は「北朝鮮からの報告を既成事実にせず、恵子さんの帰国を信じる思いがじかに伝わった」と話していた。
(2002年11月11日 神戸新聞)