新型コロナウイルスの影響により多くの学校の休校が続く中、神戸市や尼崎市など兵庫県内21市町の中学校で17日、卒業式が開かれた。神戸市では在校生や保護者の出席が認められず、例年より寂しい門出となったが、同市西区の伊川谷中学校では先生たちがサプライズを演出。各教室に「黒板アート」を描き、卒業生の思い出に花を添えた。
同校では毎年、美術部の1、2年生が3年生の教室に黒板アートを描いて祝う。今年も図案を決めていたが、突然の休校で制作できなくなったため、美術科教員の植元健さん(25)らが代わりに在校生の思いを伝えることに。チョークを砕いた粉を水で溶いて筆で描き、1日がかりで仕上げた。
式当日のこの日、約2週間ぶりに登校した卒業生らは黒板アートを見て歓声を上げた。3年の女子生徒(15)は「黒板を見て、楽しかった学校生活を思い出しました」と話していた。
卒業式は窓を開けた体育館で、在校生や保護者は出席せずに実施。卒業生は1メートルずつ間隔を空けて座り、全員の名前が呼ばれた後、代表の1人が卒業証書を受け取った。恒例という卒業生全員の合唱もなく、柿原猛校長は「よく声を出す子たちなので、歌わせてあげたかった」と残念がった。
神戸市教育委員会によると、参列できない保護者のために、運動場にスクリーンを設置して生中継した学校もあった。また多くの学校で、式典の動画をDVDに収め、後日配ることを検討しているという。(吉田敦史、井上 駿)