兵庫県で新型コロナウイルスの感染が確認されてから1カ月が過ぎたが、全国的な拡大が止まらない。兵庫県内では、介護施設や医療機関などでクラスター(感染者集団)が多く発生した。行政や病院、市民が取るべき対応とは。神戸大病院感染症内科の岩田健太郎教授に詳しく聞いた。(聞き手・井川朋宏)
-3月20日以降、連休を中心に大阪-兵庫間の往来自粛要請があった。
「両府県は感染者が多く、山陰地方などに感染を広げるリスクを考えて各府県で出入りをやめましょうというのなら分かる。2府県の行き来をやめるのは、意味不明だった。何らかのコミュニケーションエラーが起きたのではないか」
-兵庫はクラスターの発生が相次いだ。一方で、大半は感染経路をたどれる。
「全く別のこと。クラスターが多くなるのは問題だが、クラスターを追跡調査できるのは大事なことだ」
-感染が出て拡大した施設と、しない施設がある。
「コロナウイルスを入り込ませないことが何より大事。入り込み、閉じた空間や集団があれば、容易に広がる。感染が拡大しているかどうか分からないケースもある。例えば、姫路の精神科病院は、(手に入る)情報からは、感染対策の是非が判断できない。抑え込みがうまくいっているかどうかは、施設内を見て詳細を確認しないと、一概には言えない」
-感染者が判明した医療機関で、外来診療の継続を巡り対応が分かれている。
「濃厚接触者がどれぐらいいるかによる。(感染)規模が小さければ継続は可能。だが、規模が大きくなり、濃厚接触者が増えれば働く人が足りなくなり、事業継続ができなくなる」
「(基幹病院の)北播磨総合医療センターなどが(機能)停止すると、地域医療は非常に苦しむ。ものすごく大きな決断で難しい」
-医療崩壊を防ぐため、軽症や無症状の人を自宅で療養させる考えもある。
「国が、方針として明確化することが必要だ。多くの人は症状がほとんどないので、できる人は自宅療養する仕組みをつくった方がいい。自宅療養できない人を受け入れる施設も要る」
-クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を含め、行政の対応は。
「船内で感染が広がったにもかかわらず、『一生懸命やったからよかった』みたいな話になった。プロの世界では、目標をきちっと決めて、うまくいったかを検証し、うまくいかなかったのならなぜかを分析するのが一般的な手法」
-市民がパニックにならないために必要なことは。
「事実と関係のない情報に振り回されるとパニックになる。適切な情報を十分に収集することが重要だ」
【いわた・けんたろう】1971年島根県生まれ。島根医科大(現島根大)卒。米国や中国などの病院勤務を経て、2008年から神戸大大学院医学研究科教授、同大学医学部付属病院感染症内科診療科長。著書は「『感染症パニック』を防げ!」など多数。
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