新型コロナウイルスによる東京五輪・パラリンピックの延期により、宿泊して観戦する予定だった兵庫県民にも混乱が広がっている。売り手市場を背景に、予約段階で「キャンセル不可」を掲げていた宿泊施設も多く、今キャンセルしても全額負担を求められる人がいる一方、宿側が当初の対応を見直して返金するケースも。新型コロナと五輪延期で大打撃を受けたホテル業界からも、「想定外の事態」と困惑の声が上がる。(末永陽子)
「チケットもホテルもどうなるのか。小学生の息子から毎日『オリンピック行ける?』と聞かれるのですが…」
西宮市の男性会社員(35)はうなだれる。昨夏、五輪の野球チケットが当たった。すぐにホテル料金の比較サイトで宿を探し、大阪府に住む義理の両親と妻、子ども2人の計6人分を予約した。
比較サイトには「ご予約完了時から、キャンセルの場合は全額が請求されます」と示されていた。しかし利便性の高いホテルが次々と埋まっていくのを見て、慌てて申し込んだという。チケットと宿代は20万円以上かかったといい、「延期など想像もできなかった」とため息をつく。
一方、ホテルチェーンの東横インは、東京都内や一部の競技会場近隣ホテルで、五輪対応の特別料金を上乗せするキャンセル規定を設けていたが、通常に戻すなど、対応を見直す動きも出ている。
西宮市の女性会社員(41)は昨年12月、五輪のサッカーと野球のチケットに当選。宿泊先を探したが、どこも満室だった。車中泊を検討していたところ、競技会場から離れた宿を見つけ、9万4千円をクレジットカードで支払った。
予約画面には「ご予約完了時から返金不可」と記載され、キャンセル規定も「宿泊料金の100%」という説明があった。五輪延期が決まった当初は諦めかけていたが、宿に確認した結果、全額返金されることになったという。
消費者庁制度課は「通常は宿が示す利用規約には従うのが原則。ただ、五輪やコロナは予測できない異常事態なので、宿泊施設ごとの対応になるだろう」と説明する。
神戸市内のホテルの担当者は「キャンセル料は、ホテル側に生じる損失によって決められている」とする。首都圏のホテルについては「宿泊直前にキャンセルされてもすぐに予約が入る時期なら損失は少ないが、五輪延期とコロナの影響は大きい。対応に悩む宿も多いのでは」と話していた。
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