新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、兵庫県内でも保護者の職種を限定して受け入れたり、登園自粛を求めたりする保育園が相次いでいる。10日には、神戸市が医療従事者や警察、消防、介護施設などで働く保護者を対象とする「特別保育」に移行すると発表。預け先を失う親たちからは戸惑う声が上がったが、園は「園児と保育士、地域を守ることにつながる」と理解を求めた。(末永陽子、佐藤健介)
「明日からどうしたら…」。神戸市の女性(37)は6日、途方にくれた。
長男(5)と長女(4)を預ける保育園から「当面、両親がともに医療従事者か、警察職員、消防署員の家庭のみ預かる」との知らせを受けた。共働きで、両親は九州在住。身近な預け先はない。
しばらく夫と交互に有休を取って対応する予定だが、「保育士さんの大変さも分かるけど、どうしたらいいのか」とため息をつく。
預け先の園は「医療体制を守る措置で、差別ではない」と説明する。
神戸市に住む女性(28)は0歳の長男を認可保育園に預け、4月に職場復帰する予定だった。だが、3月下旬に「登園日を8日まで延期する」という連絡が入った。
さらに、7日の緊急事態宣言後には「5月6日まで、保護者の1人が在宅勤務の場合は家庭で世話をしてほしい」との通達が。夫(30)は3月下旬から在宅勤務だが、「世話しながら、オンラインで会社の仕事をこなすのは難しい」とこぼす。女性は会社に育休延長を相談中だが、「先が見えない」と不安がった。
保育園も葛藤を抱える。
兵庫県は保育サービスの事業継続と同時に、利用自粛を要請。神戸市は10日、「真にやむを得ない場合」のみ受け入れる方針とし、保育を希望する保護者には申出書の提出を求めることとした。
神戸市垂水区の幼保連携型認定こども園「花の森」は2月末からすでに、保護者に在宅保育を要請。今は半数の約50人を預かる。
同園は自治体から休業要請が出た場合も、医療従事者らは受け入れる意向だったという。運営する社会福祉法人「みかり会」(南あわじ市)の谷村誠理事長(58)は「医療体制を支えるのが最優先」とする。
ただ、だっこやおんぶなど子どもと密着することも多い現場は、「3密」は避けがたい。換気や消毒を徹底しつつ、保育士は「子どもも自分も感染させてはいけないという極度の緊張が毎日続く。気が休まらない」と苦悩を口にした。
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