オンライン申請に必要なマイナンバーカードの手続きが急増している国の「特別定額給付金」。兵庫県内の自治体窓口でも11日、10万円の給付申請を急ぐ人たちで混雑した。勤め先が休業し、細っていく収入。列をなす人は新型コロナウイルスの感染拡大による暮らしの逼迫(ひっぱく)を訴え、助けを求めた。
「早く10万円を受け取って気持ちを楽にしたい。来月、自分がどうなるか分からない状態なので」。同カードの暗証番号が分からず、神戸市の長田区役所を訪れたパート従業員の女性(62)は声を落とした。
病気で手術をし、5カ月ほど飲食店の仕事を休んでいた。4月半ばに職場復帰する予定だったが、店は5月末まで休業に追い込まれた。1人暮らし。貯金を切り崩し、節約しながらの生活が続くが「それもだんだんとしんどい」と嘆く。
「不安はあるが、10万円を受け取って生活のめどが付けば頑張れる」と女性。政府に「今の状況が続くならば、今回の給付金で終わらずに支援を続けてほしい」と望んだ。
同じ長田区に住む神戸大学大学院博士課程1年のベトナム国籍の男性(28)も、オンライン申請ができず同区役所へ出向いた。5月末に支払期限が迫った大学の学費に給付金を充てたいという。
普段はコンビニと飲食店のアルバイトを掛け持ちするが、新型コロナの影響で飲食店が休みに入った。月に10万~12万円あった収入が、今はコンビニの約2万円だけとなった。貯金や友人からの借金でやりくりするが、不安は募る。「日本でこんな目に遭うとは。この状況を早く終わらせてほしい」と訴える。
尼崎市の派遣社員の男性(71)は、同カードの暗証番号を再設定するため同市役所へ足を運んだが、システム障害のため手続きができなかった。男性は「少しでも生活の足しにしたいのに」と憤りを隠さない。
男性は妻(66)と娘(22)の3人暮らし。建築作業員として働くが、新型コロナの影響で3月初旬から仕事がなく、月収は約40万円も減った。貯金を切り崩すが、家賃や光熱費など毎月約20万円の固定費が家計に重くのしかかる。
男性は「コロナ禍がいつまで続くか分からない。終息してもすぐに働けるのかと不安は大きくなるばかり。生活を切り詰めながら、落ち着くのを待つしかない」とため息交じりに話した。(小谷千穂、大田将之、田中宏樹)
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