新型コロナウイルスの感染拡大による休業要請の解除を受け、臨時休館していた兵庫県内の美術館・博物館が、再開へ向け準備を進めている。感染防止策として、観客数を制限するために時間指定の予約制度を導入する施設も。一方で、発熱した人を検知するサーモグラフィーが品薄のため配備できず、近日中の再開を見送るところもあり、各館の苦悩や模索が続く。(堀井正純)
神戸市中央区の市立博物館は19日から、所蔵作品による常設展示を再開する。しかし、英国有数の名コレクションが来日し、集客力の高い特別展「コートールド美術館展」は3密対策が困難で、開幕のめどが立たないまま。本来は3月28日からの予定で、報道向けの内覧会も済ませていた。
同様に各館では、観客が多数集まる大規模展について、開催の是非が問われそうだ。国際的な展覧会の場合、海外からの作品輸送が厳しい状況も続いている。
西宮市大谷記念美術館が毎年夏に催す定番の人気企画「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」は、イタリア側の事情で作品の通関スケジュールなどが乱れ、今年は中止が決まった。
また6月1日から特別展「メスキータ展」を再開するに当たり、初めて時間指定の予約制を採用。午前10時~正午▽午前11時~午後1時-など六つの時間帯に分け、電話で予約を受け付け、1日の入館者数を500人までに制限する。「素晴らしい内容なので、ぜひ多くの人に見てもらいたいが、来場を呼び掛けにくいジレンマもある」と越智裕二郎館長は話す。
感染防止用の機器不足もある。西播磨や但馬、丹波地域にある県立の施設は18日以降、順次開館の方針だったが、兵庫陶芸美術館(丹波篠山市)は、入館者の体温チェック用のサーモグラフィーが準備できず、当面は休館を続ける。
各地でサーモグラフィーの需要が高まり品薄といい、「準備が整えば早く開館したいのだが…」と同館の担当者。県教育委員会が、県立美術館(神戸市中央区)や県立歴史博物館(姫路市)などのサーモグラフィーも目下、手配中という。
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