デビューから初タイトルまで、藤井聡太新棋聖(17)が要した時間はわずか3年9カ月。「普通はプロ入りしてから一度や二度、壁にぶつかるものですが、まったくそういうことがないですよね。今は控えめに見ても棋界4強の1人と言える」。新たな最年少記録を加えた若きスターの強さに、21歳2カ月の史上最年少名人の記録を誇る谷川浩司九段(58)=神戸市東灘区=も舌を巻く。
■成長続ける「棋界4強の1人」
藤井新棋聖はプロ入り以降、年間勝率が常に8割を超える。「順位戦で昇級できなかったこと、王将戦リーグで挑戦を逃したことはあるが、そうした経験を生かして成長し続けている」
緊急事態宣言発令で2カ月間、長距離移動を伴う対局が制限された。「研究会もできず、棋士それぞれがどのように過ごすか問われた」(谷川九段)期間を経て、以前にも増して勝ち続けた。16日の勝利で2020年度は16勝2敗、勝率は8割8分9厘。「自分の将棋を見つめ直す良い期間になったのでは」と推測する。
王位戦7番勝負(神戸新聞社主催)第1局では立会人として、木村一基王位(47)との激闘を見届けた。「和服での立ち居振る舞いは自然。時間の使い方もめりはりがあって理想的だった」と高く評価する。「結果だけではなく将棋の内容も素晴らしい」として豊島将之竜王・名人(30)=尼崎市、渡辺明二冠(36)、永瀬拓矢二冠(27)の名を挙げ「当面は4人によるタイトル争いが続きそう」とみる。
もっとも、まだ17歳の藤井新棋聖が今以上に力を伸ばすのは確実だ。「彼の若さは最大の長所と言えるでしょう。他の3人が同じようにレベルアップするか、藤井新棋聖ひとりが抜け出すのか…」。棋界の新星はこの先、どこまで大きくなるのだろうか。(溝田幸弘)