新型コロナウイルスの感染拡大で、地域の夏祭りや花火大会などのイベントが相次いで中止となり、露天商やおもちゃの卸売業者が苦境にあえいでいる。例年は夏から秋にかけて年間の大部分を売り上げるが、今年は露店を出す機会がほとんどなくなり、収入が激減。「この状態が続けば生活できなくなる」と悲痛な声が漏れる。(斉藤正志)
「正月に神社で出店したのを最後に、露天商としての収入は全くない」。たこ焼き店やかき氷店などを出す神戸市垂水区の男性(59)は、ため息をつく。
例年は6月下旬ごろから、毎週のように夏祭りや花火大会に店を出していたが、今年は感染対策が難しいため、軒並み中止になった。同区の海神社では同業者への連絡役を担っているが、夏祭りと秋祭りの中止が決まり、同業者に電話で伝えると「やっぱりそうですか…」とがっかりされた。
スーパーの店頭販売に活路を求め、各店舗を聞き回る露天商もいるという。「感染症なので諦めるしかないが、このままなら廃業する者もでてくるだろう」と悲愴(ひそう)感を漂わせる。
また、おもちゃ卸売りの「魚住商店」(兵庫県加古川市野口町長砂)も、政府が緊急事態宣言を出した4月からほぼ客が来ない状態が続く。
同店は、金魚すくいのポイ(すくい網)やスーパーボール、水鉄砲、プラスチックの刀などを、地域の夏祭りや盆踊り大会の主催団体、出店者などに卸している。例年なら各地で春ごろから主催者がイベントを計画するが、今年はコロナ禍で集まることさえできず、開催時の感染対策の難しさもあって、大半が中止と決まったという。
店主の長谷川就彦(なるひこ)さん(41)は「いつもならこの時期は注文の電話が引っ切りなしにかかってきて、開店前に客が並んでいることもある」と話し、客のいない店内を見やる。商品は企業の販売促進品や保育施設の催しの記念品などとしても売れるが、今年は中止になるか参加人数を減らしているため、売り上げは例年の1~2割程度にとどまる。
「夏場に年間の約8割の売り上げがある。今年はそれがほとんどなくなる。打撃なんてもんじゃない。生活ができない」と長谷川さん。現在は国の持続化給付金やコロナ対策の無利子融資でやりくりしているといい、「いつまでこんな状況が続くのか。とにかく早く収束してほしい」と、やり場のない怒りを口にした。
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