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父や五輪への思いを語るアシックスの君原嘉朗オリ・パラ室長=神戸市中央区港島中町7、アシックス本社
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父や五輪への思いを語るアシックスの君原嘉朗オリ・パラ室長=神戸市中央区港島中町7、アシックス本社
2012年の神戸マラソンにゲストランナーとして参加し、ゴールする君原健二さん=神戸市中央区港島中町6
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2012年の神戸マラソンにゲストランナーとして参加し、ゴールする君原健二さん=神戸市中央区港島中町6

 新型コロナウイルス感染拡大で1年先に延期された東京五輪。スポンサー企業のアシックス(神戸市中央区)で、調整部署の責任者君原嘉朗(よしろう)さん(49)が準備に奔走している。一時は五輪に携わる意味を自問自答したが、メダリストの父、君原健二さん(79)の存在を支えに、希望をつなぐ。(中務庸子)

 嘉朗さんが室長を務める「2020東京オリンピック・パラリンピック室」は、東京を拠点にする約30人の部署。社内と大会組織委員会や日本オリンピック委員会などとのパイプ役になる。運営の最前線で日本代表のユニホームや関連グッズの企画、スポンサー企業同士の交流促進などを進めてきた。

 準備も大詰めの3月、新型コロナで延期が決まった。商品を保管するための倉庫の確保など想定外の対応に追われた。新聞やテレビでは五輪の経費や在り方などについて連日、厳しい意見が飛び交った。「やってきたことは間違いだったのだろうか」。不安に襲われた。

 そんな時思い返したのが父の言葉だった。「五輪の普遍のテーマは世界平和」。何度も耳にしていた。

 健二さんは、1964年東京五輪のマラソンで8位、68年メキシコ五輪では銀メダルを獲得した一流のアスリート。ただ、子どものころは偉大さがよく分からず、嘉朗さんの目には「酒ばかり飲み、だらしない」と映っていた。

 転機は高校2年だった88年。ソウル五輪を現地で一緒に観戦し、「五輪のおかげで今の自分がいる」と語る父の横顔と、聖火の炎に心を動かされた。初めて著書を読んだ。代表選手の重圧や、ライバルだった円谷幸吉さんの自死で苦悩したことを知った。

 大学卒業後、アシックスに入社した。ウエア開発やランニング関連の企画部門を経て、15年から現職。「コロナ前と全く同じ状態での五輪開催とはいかないだろうが、人類が幸せに暮らし続けるため、未来につながる大会の運営に貢献したい」

 今回、健二さんは円谷さんの故郷、福島県で聖火ランナーを務めることが決まっている。聖火リレーも延期中だが、健二さんはこれまでのレースで途中棄権が一度もない“鉄人”。「来年まで、走れる元気な体を維持する」と話しているという。父にあやかり、嘉朗さんは「諦めない気持ちで仕事に励む」。

 

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