神戸市須磨区の企業主導型保育所「須磨うみとやま保育園」の全保育士と園長ら計11人が給与や労働条件を巡って運営会社に反発し、8月末で退職する意向を示している。一斉退職となると、9月から休園の可能性もあり、保護者らは困惑。神戸市幼保事業課は「認可外なので直接的に指導できる立場にはない」としている。
企業主導型保育は、待機児童解消の一環で2016年度に始まった制度。認可外だが、認可施設並みの助成を受けられる。同園は合同会社「イネイト保育会」(京都市)が昨年3月に開園。定員30人に対し、0~6歳児約20人を受け入れている。
退職の意向を示しているのは、園長ら保育士7人と調理師2人、保育補助2人で、事務職以外の全員。園長は「子どもや保護者のことを思うとやめたいわけじゃない。運営面が改善されないと、この法人では働けない」と話す。
園長らは、昨年の冬季賞与の不明朗さや、労働時間・日数の条件が一方的に変更されたことなどを指摘する。19年3~10月分の月給で処遇改善手当(4万~数千円)が支払われず、運営会社は12月の冬季賞与で一括支給したとするが、明細書に賞与と手当の内訳が示されていなかったという。
4月から勤務する保育士は処遇改善手当が月4万円で10月分までだと計28万円が見込まれていたが、冬季賞与は30万円。手当相当額を差し引くと2万円の賞与となり、手当が発生しないパート事務職員の賞与5万円より少ない計算になる。
園長らは運営会社に対し、明細書の発行や労働条件の変更について説明を求める文書を提出。会社側は「賞与支給に計算ミスはない」などとする回答にとどまっているという。保護者の一人は「経営の問題で突然子どもの環境が変わってしまうのは残念。仕事もしているのに、一時的に休園となればどうすればいいのか」と不安をにじませる。
イネイト保育会の代表社員は「運営をやめないよう精いっぱい努める」とコメント。保護者らに27、28日夜にオンラインで説明会を開くと連絡している。