ベネチアでの上映を前に映画祭の会場とオンラインでつなぎながら行われた記者会見では、主演の高橋一生さん、蒼井優さんも登壇し、作品や役柄への思いを語った。今回の受賞は2人の役者としてのキャリアにおいても大きな意味を持つことになりそうだ。
■蒼井優さん
演じた聡子は、自分の衝動や(高橋一生演じる夫の)優作への愛、さらに嫉妬と、動物的に自分の感覚に突き動かされている。映画の中で穏やかに生きられるのは最初の数分だった。演じている間は本当にしんどかった。あの時代、あの環境の中で生きたのが聡子という女性だったのだと、完成した作品を見終わってから説明できるようになった。
こういう役柄なので神戸での撮影中はずっと緊張していて、どこにも行っていない。差し入れに神戸の菓子をいただいて、神戸を実感していたくらい。
ただプライベートでは以前、ジャズを聴きながらお酒が飲めるところに何度か行ったことがあり、とても好きになりました。
■高橋一生さん
日本軍の犯罪行為を知り、それを世に知らしめようと奔走する貿易商の優作。見方によっては狡猾で嫌な人間に見えるかもしれないが、そこにはあえて注釈は入れたくないと思っている。
水面はとても穏やかに見えるが、その下ではとぐろを巻いているような動きや流れがある作品。優作とはどんな人間か、見てくださった方にゆだねたい。
海沿いに建つ神戸・旧グッゲンハイム邸を、美術部の方が細部まで作り込み、われわれの邸宅にしてくれた。その景観の中にずっといたい、そんな気分になった。
蒼井さんとは逆で、毎晩、おいしいものを食べに行った。神戸は「おいしい街」でした。