世界三大映画祭の一つ、ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(監督賞)に輝いた「スパイの妻」のオンライン配信イベントが7日、東京都内であり、神戸市出身の黒沢清監督、主演の蒼井優さん、高橋一生さんが登壇した。トロフィーがお披露目され、黒沢監督は「映画の歴史に名前が刻まれたんだな」と感慨に浸った。
「スパイの妻」は1940年代の神戸が舞台。太平洋戦争開戦前に偶然、国家機密を知り、正義感から世界に訴えようとする実業家と妻の物語で、神戸市内各所でロケが行われた。
イベントはファンから寄せられた質問に答える形で進行。作品のテーマについて黒沢監督は「何かに向かっていこうと強い意志で進んでいく2人と、立ちはだかる社会の摩擦や軋轢」と説明。印象深いロケ地には3人とも同市垂水区の旧グッゲンハイム邸を挙げ、黒沢監督は「今まで使っていたかのような生活感のある洋館は、日本全国であそこにしかない」と絶賛した。
日本では10月16日から公開される。(今福寛子)
■「スパイの妻」あらすじ
貿易会社を経営する福原優作(高橋一生)とその妻、聡子(蒼井優)。出張で満州に赴いた優作が、予定より遅れて帰国、以降、様子がおかしい。満州に同行した優作の甥、文雄(坂東龍汰)は、優作の会社を辞め、有馬温泉にこもって小説を書くと言い出す。
ある日、海で女性の死体が見つかる。文雄が滞在する温泉の仲居だったその女性は、実は満州から優作が連れ帰ったと知り、聡子は勇作の不定を疑う。
優作は満州で偶然、恐ろしい国家機密を知り、正義感から「世に知らしめる」と打ち明ける。聡子は協力を約束、2人で手分けしてその証拠を持ち、アメリカへ亡命する計画を立てる。
そんな2人に、憲兵の津森(東出昌大)が目を光らせていた。
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