1年程度の延期が決まった「ワールドマスターズゲームズ(WMG)2021関西」。新型コロナウイルスの感染予防と練習の両立に悩んでいた兵庫県内の選手、おもてなしの準備を進めていた地元経済界や自治体などは、仕切り直しのプランを練り始めた。
「五輪代表のような気分で待ち望んでいたが、高齢者が集まる大会は現時点では難しいだろう。体力が不安だが、練習あるのみ」
卓球歴74年の大ベテランで、男子ダブルスなど4種目にエントリーしている男性(78)=神戸市灘区=は、80歳で大会を迎えることになった。
「選手間の交流がないとなると、あまりにも寂しい」と男性。2002年のオーストラリア大会では約3千人が集まった歓迎会を満喫し、中国人選手と一緒に観光も楽しんだという。2年後、そんな大会に戻っていることを期待する。
競泳5種目にエントリーした姫路市の会社員女性(43)は、「世界の人たちと交流してなんぼの大会なので、無理に開くわけにもいかないだろう。メダルが欲しいが、モチベーションを保てるか心配」と複雑な心境を語る。今後、泳ぎのフォーム改善にじっくり取り組みたいという。
ラグビーワールドカップ、東京五輪・パラリンピック、そしてWMGと続く19~21年を「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と位置づけ、観光客の誘致に取り組んでいた関西の経済界。1461億円の経済効果を見込んでいたが、今月27日時点で海外からのエントリーは目標の1割にも満たない1794人にとどまる。
大会組織委員会は国内3万人、海外2万人の参加誘致や経済効果の目標は変えない。関西経済連合会の佐藤廣士副会長(75)=神戸製鋼所顧問=は「遅れても実施することが重要だ。企業や地域が『健康』を意識し、スポーツに親しむ流れを関西に根付かせたい」と話す。
兵庫県では11競技15種目が予定されている。地図と磁石を使ってチェックポイントを回る「オリエンテーリング」会場の一つ、香美町は、地元グルメを楽しめるプランの準備など町を挙げて取り組んできた。
同町役場の男性(50)は「町民にもやっと浸透してきていた。競技の体験会を開くなど、延びた1年を有効に活用したい」と話していた。(斉藤絵美、藤村有希子、佐伯竜一、井上 駿)