事件や事故で深い傷を負った被害者や遺族を対象に、上智大の伊藤冨士江元教授(社会福祉学)や武庫川女子大の大岡由佳准教授(保健福祉学)ら4人の研究グループが、生活状況の変化や被害の後に受けられた支援などをインターネット上で調査している。当事者に無記名で回答してもらい、現在の制度や施策で不足している点を明らかにし、新たな支援体制を考える。(村上晃宏)
上智大元教授で同大客員研究員の伊藤さんを中心とした研究グループに参加するのは他に、帝京平成大の大塚淳子教授(精神保健福祉学)と、白鴎大の平山真理教授(刑事法)。調査は、1990年から2019年までに交通事故や性犯罪、ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)などの暴力犯罪、殺人事件で被害を受けた現在18歳以上の被害者や遺族を対象とする。
国は80年に犯罪被害者等給付金支給法を制定し、遺族や被害者への経済的援助を開始。05年には犯罪被害者等基本法が施行され、精神的ケアや捜査、公判での情報提供などが実現した。
一方、自治体の支援も拡充。全国被害者支援ネットワークのまとめでは2019年4月時点で、33都道府県と11政令市、501市区町村に犯罪被害者を支援する条例があるという。兵庫では、明石市が4月、心神喪失などで加害者が刑事責任を問われなくても、遺族に給付金を支払う改正条例を施行し、注目された。
ただ、伊藤さんは「遺族と被害者が制度や施策を利用できているか、満足しているかの検証は不十分」とする。民間団体の支援は資金面が課題で地域差もあり、「被害から『立ち直る』ために必要なものを探る調査」と協力を呼び掛ける。
調査は、伊藤さんが設けたウェブサイト(http://fujie‐ito.com/research/cvi.html)で行う。結果はホームページなどで公表する予定。回答期限は20日まで。