ミャンマーで国軍によるクーデターが起こり、兵庫県内でも行く末を案じる声が広がった。
「また軍事政権に戻ってしまうのか」
約30年前に来日したミャンマー出身の男性(65)=芦屋市=は声を落とす。「一部の軍幹部が富を独占し、民衆は声を上げられない。そんな時代に誰も戻りたくないはず」
在日ミャンマー人向けの日本語教室を開く団体「ミャンマー関西」の猶原信男代表(69)=神戸市須磨区=は、元生徒らから「国のためにできることはないか」と相談が相次いでいる、と話す。「現地では報復を恐れて行動を起こせないのだろう」
ミャンマー難民の支援を続ける神戸定住外国人支援センター(神戸市長田区)の金宣吉理事長は「コロナ禍が収束すれば、難民が増える可能性もある。政府は受け皿の整備を検討すべきではないか」と求めた。
「今回の要因にはコロナもあるのでは」と指摘するのは、感染症に詳しい関西福祉大の勝田吉彰教授。調査研究で同国に通った経験がある。
「2011年に軍事政権が終わった際には投資が流れ込み、経済が上向いた。しかしコロナでその流れが止まり、『民主主義をやっても得をしない』と軍部が感じたのでは」と分析。「日本主導の工業団地もできている。日本政府として働き掛けてほしい」と話す。
また、手袋メーカーのショーワグローブ(姫路市)はヤンゴン郊外の経済特区に、工業・作業用製品の工場を設けている。クーデターを受けて操業を停止し、日本人出向者2人を含む従業員約740人を全員、自宅待機にした。製品はベトナムやマレーシアの工場で仕上げ、日本や欧米に輸出。広報担当者は「すぐに在庫がなくなる状況ではない」と推移を見守る。
臨床検査機器・試薬メーカーのシスメックス(神戸市中央区)は駐在員2人に自宅待機を指示。南部ティラワ港のコンテナターミナルを運営する港湾物流大手の上組(同)は日本人従業員7人の無事を確認した。(井上 駿、井川朋宏、横田良平、大島光貴)