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人気のある植木鉢を手掛ける市野伝市窯の市野達也さん(左)と息子の弘透さん=丹波篠山市今田町上立杭
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人気のある植木鉢を手掛ける市野伝市窯の市野達也さん(左)と息子の弘透さん=丹波篠山市今田町上立杭
愛好家の自宅に並んでいる「伝市鉢」=大阪府羽曳野市内(本人提供)
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愛好家の自宅に並んでいる「伝市鉢」=大阪府羽曳野市内(本人提供)

 新型コロナウイルス禍で、自宅で過ごす時間が増える中、日本六古窯の一つ、丹波焼の植木鉢が、ガーデニングや観葉植物を楽しむ愛好家から注目されている。手作りの風合いや形状に加え、通気性や浸水性など、機能性にとことんこだわった逸品で、会員制交流サイト(SNS)でも話題となっている。(綱嶋葉名)

 丹波焼の窯元が軒を並べる兵庫県丹波篠山市今田町の立杭地区で、植木鉢を専門に手掛けている市野伝市窯(同町上立杭)。鉢は、ろくろを回したり、石こう型を使ったりして豊富なサイズを展開。植物に合わせて改良を重ねた形状などが評判で、植物愛好家の間では「伝市鉢」の名で通っている。

 同窯が本格的に植木鉢を作り始めたのは約60年前。先代の市野伝市さん(90)が、東京山野草会の会長らに依頼され、山野草用の鉢を作ったのがきっかけだった。水はけと通気性を良くするため、土と砂の配合量や鉢の厚みを工夫。改良を重ね、内部の傾斜や鉢底穴の大きさが特長の伝市鉢を作り上げた。

 60代以上が主な客層だった伝市窯に変化が起きたのは3年前だった。東京のアパレルブランド「ネイバーフッド」から、「園芸用のコレクションラインを立ち上げたい」というメールと、ペンキで黒く塗られた伝市鉢が、同窯の窯元、市野達也さん(58)に届いた。「こんな鉢がほしい」。リュウゼツラン科の多肉植物「アガベ」を育てる同ブランドの創業者、滝沢伸介氏からの提案だった。

 2017年に園芸用コレクションライン「SRL」が立ち上がり、20年7月には3作目となるコラボ商品が発売された。鉢の内と外の両方に黒い釉薬をかけた現代風な鉢は、ネイバーフッドのファンに支持され、現在では30~40代男女が伝市窯の客層の7割を占めている。

 また、SNSの影響も大きい。写真共有アプリ「インスタグラム」では、伝市鉢のファンが自宅に置く植木鉢や植物の写真を投稿。20年7月に始めた伝市窯のアカウントを見て買いに来る人や、海外との取引も増えているという。コロナ禍で「おうち時間」が増えたこともあり、個人の問い合わせや注文が相次ぎ、売り上げも増加。注文から納品まで3カ月待ちという。

 かつては「(家の)外に置く物だから」といった理由で、食器類よりも下に見られることがあった植木鉢。植物が猛暑を越せるように。厳しい冬に根が凍らないように-。「土や山の代わりになるものを作らなあかん」と、植木鉢に向き合い続けて来た伝市窯では、今も模索を続ける。達也さんは「これからも植木鉢専門。それは変わらない」と表情を引き締めた。

 

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