東日本大震災から10年となった11日、東京電力福島第1原発事故で今も住民の大半が避難生活を続ける福島県大熊町で、「追悼の碑『希望の灯り』」の除幕式があった。モデルとなった神戸・三宮の東遊園地のガス灯「1・17希望の灯り」から分灯した炎が披露され、住民や町職員は「神戸のように町を復興させたい」と決意を新たにした。
大熊町は原発事故で約1万1500人の住民全員が町外に避難。町中心部は放射線量が高い帰還困難区域になり、町に戻ったのは現時点で約200人しかいない。避難先に生活基盤ができた人が多く、昨年秋に実施した住民意向調査では「戻らないと決めた」が60%を占め、「戻りたい」は10%しかなかった。
ただ、帰還を断念した住民らの6割が「大熊町とのつながりを保ちたい」と回答。同町が故郷と住民をつなぐ場として着目したのが、阪神・淡路大震災の犠牲者を追悼し、復興の象徴でもある「希望の灯り」だった。
碑は町役場前に設置した。二酸化炭素排出削減のため、光源には発光ダイオード(LED)を採用した。除幕式では神戸の灯りを管理するNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯り(HANDS)」の藤本真一代表理事(36)が吉田淳町長に分灯した炎を手渡し、ライトがともされた。
町役場周辺では住宅や診療所、商業施設などの整備も進む。同県いわき市で避難生活を続ける宗像宗之さん(68)は「神戸の復興の火が来たんだから、大熊も復興できる。もう少し施設が整ったら帰りたい」と笑顔を見せる。
一方、帰還困難区域出身の男性(64)は「家は朽ち果て、家族もばらばらになった。今から大熊に戻るのは無理だが、ここが故郷に近づく場所になれば」と碑を見詰めた。(古根川淳也)