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モデルを務めた小磯良平の名画「化粧する舞妓」の前に立つ芸妓・久富美さん=神戸市立小磯記念美術館
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モデルを務めた小磯良平の名画「化粧する舞妓」の前に立つ芸妓・久富美さん=神戸市立小磯記念美術館
小磯が残していた舞妓時代の久富美さんの写真。1963年に芸妓となったという(神戸市立小磯記念美術館蔵)
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小磯が残していた舞妓時代の久富美さんの写真。1963年に芸妓となったという(神戸市立小磯記念美術館蔵)

 昭和を代表する洋画家小磯良平(1903~88年)の名画「化粧する舞妓」。神戸市立小磯記念美術館(同市東灘区)で開催中の特別展「至高の小磯良平」(神戸新聞社など主催)会場で、モデルになった女性が30年ぶりに自らの肖像画と「再会」した。小磯が「おもろい顔やな」と気に入り、少なくとも10点の油彩画でポーズを取ったという。

 京都・先斗町でバーを営む芸妓・久富美さん(78)。京都出身で、1959年に舞妓になった。慣れないころ、京都・南禅寺の料亭で小磯の支援者だった武田薬品工業の武田長兵衛社長のお座敷に出た。その席で「あんた、おもろい顔やな」と小磯の目に留まり、約2年半、モデルを務めた。

 「おもろい顔」はもちろん褒め言葉。「舞妓になりたてでアンバランスというか、特徴があったんでしょうねえ」と久富美さん。同館の多田羅珠希学芸員は「画家の創作意欲を刺激するという意味でしょう」と説明する。小磯は京都に通い、熱心に制作。出来上がった絵は、雑誌「週刊朝日」の表紙や武田薬品工業のカレンダーにも用いられた。

 「化粧する舞妓」は広島市の「大野ギャラリー」が所蔵。制作は62年ごろとみられる。油絵だが、スケッチのように素早い筆致で、顔と髪を描くことに集中し、ほかは省略している。

 久富美さんによると、「最後にモデルを務めた1枚」。「先生の思いが凝縮されています」と語り、「目の表現と、絵の中でビラ(かんざし)が動いているのがすごい」と感嘆する。ポーズは小磯の指示という。

 「一心に鏡を見詰めるまなざしに、初々しさが描き取られている」と多田羅学芸員。少女でもなく、大人でもない。「舞妓という『生き物』を描いた」と同館の岡泰正館長は絵の魅力を表現する。

 久富美さんは、バーに絵の写真を飾っているが、実物の鑑賞は、小磯の没後、91年に京都で催された「小磯良平遺作展」以来。「本物はやはり迫力が違います」と再会を喜んでいた。(堀井正純)

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 特別展「至高の小磯良平」は21日まで。同館TEL078・857・5880

 

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