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石綿由来のがんで亡くなった島谷和則さんの遺影を手にし、会見に臨んだ遺族ら=26日午後、神戸市中央区橘通3
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石綿由来のがんで亡くなった島谷和則さんの遺影を手にし、会見に臨んだ遺族ら=26日午後、神戸市中央区橘通3

 阪神・淡路大震災後のがれき処理に当たり、悪性腹膜中皮腫を発症して亡くなった明石市職員男性について神戸地裁が26日、公務災害と認めた。判決は、形式的な認定基準の適用を退け、震災直後の混乱を考慮する必要性を強調。原告弁護団は、石綿関連疾患の「救済の間口を広げる」と評価した。

 「夫の思いを胸に今日まで頑張ってきてよかった」

 判決後の会見で、原告の島谷弘美さん(57)=明石市=が安堵(あんど)した声で語った。震災後、夫の和則さんは被災地に広がったがれきを回収。「毎日、鼻の穴を真っ黒」にして帰宅したという。その後、石綿が原因の一つとされる悪性腹膜中皮腫と診断され、2013年に49歳で亡くなった。

 裁判で、被告の地方公務員災害補償基金側は、和則さんの業務は公務災害の認定基準を満たさないと主張。神戸地裁はこの主張を認めた上で、公務災害かどうかは被災状況など個別に検討すべきとし、発症と公務の因果関係を認めた。

 弁護団は「基準を満たさないと門前払いされたケースも公務災害、労災になることを示してくれた。中皮腫と診断された人たちに対するより広い救済の足がかりになる判決だ」と意義を語った。

 阪神・淡路で倒壊した建物から大量の石綿が飛散したとみられる。吸い込んでから発症まで十数年~50年の潜伏期間を経て発症するとされ、今後の発症増が懸念される。弘美さんによると、闘病中の和則さんは「発症していなくても、同じ仕事に携わった同僚が心配」とよく口にしていたといい、弘美さんは震災復興に従事した人の「少しは支えになるのでは」と喜んだ。

 石綿問題に取り組むNPO法人ひょうご労働安全衛生センター(神戸市)によると、震災後のがれき処理などで石綿を吸い込み、労災や公務災害に認定された人は少なくとも5人いるという。(那谷享平)

 

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