新型コロナウイルス感染対策で、政府による「まん延防止等重点措置」が適用され、神戸、尼崎、西宮、芦屋の4市を対象に指定すると決めた兵庫県。3月29日の時点では、同措置について「そのような状況にない」としていた井戸敏三知事だが、政府の方針を受け、4月1日に措置の要請に踏み切った。対象自治体の首長からは前向きに受け止める声が上がった一方、飲食店関係者の間には、効果への疑問と諦めムードが交錯した。
「随分早いタイミングで来てしまった」。井戸知事は1日の会見で、感染急拡大の勢いが想定を超えたことを強調した。2月末時点で、直近1週間の新規感染者の1日平均は、ピーク時の10分の1以下の20人台前半に。県は緊急事態宣言解除の前倒しを国に求めた。
だが宣言解除後の3月にリバウンド。3月末時点で、病床使用率=62・2%(うち重症病床62・9%)▽感染者数の前週比=1・96倍▽経路不明の割合=53・1%-の3指標はステージ4(爆発的感染拡大)に相当し、井戸知事は「当初の対応に誤りはないが、結果が伴っていないとの指摘は甘んじて受ける」とした。
神戸、尼崎、西宮、芦屋の4市を措置の対象とすることについては「(感染の)増加状況を勘案した」と説明。3月末までの1週間で、4市は人口10万人当たりの感染者が20人前後と、前週の2倍程度に上った。
神戸市の久元喜造市長は1日の会見で、県側に措置の適用を要請していたと明かし、「病床が逼迫(ひっぱく)しており、実効性のある措置を期待したい」と述べた。芦屋市の伊藤舞市長も「医療提供体制の逼迫を避け、感染拡大を抑え込むために措置はやむを得ない」とコメント。尼崎市の稲村和美市長は「適切な対応で感染拡大を食い止めたい」とした。
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一方、神戸市中央区の焼き鳥店の男性店長(41)は「緊急事態宣言の解除で営業が午後9時までに延び、常連客が6割ほど戻っていたのに。1時間の違いは大きい」。同区のもつ鍋専門店の男性従業員(40)も「採用したアルバイトにも生活がある。どうしたらいいか」と表情を曇らせた。
西宮市の居酒屋の男性店主(73)は「粛々と受け入れるしかない」としながらも、「その場しのぎにしかならないのでは」とぽつりと漏らした。(井川朋宏、初鹿野俊、古根川淳也、大田将之)