• 印刷
「演劇のまち」がテーマになった両候補の公開討論会=15日、豊岡市内
拡大
「演劇のまち」がテーマになった両候補の公開討論会=15日、豊岡市内
演劇祭の期間中各地で行われたパフォーマンスに見入る観光客ら=2020年9月20日、豊岡市城崎町湯島
拡大
演劇祭の期間中各地で行われたパフォーマンスに見入る観光客ら=2020年9月20日、豊岡市城崎町湯島

 25日に投開票された兵庫県豊岡市長選で、5選を目指した現職の中貝宗治氏(66)が、元同市議会議長で新人の関貫久仁郎(かんぬきくにお)氏(64)に4・1ポイント差(1665票差)で破れた。国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰や「演劇のまち」づくりなど独自の施策で全国的に注目を集めたが、日々の暮らしにつながる身近な施策を求める市民の支持を得られなかった。

 「演劇のまちなんかいらない」。関貫氏は市長選が告示された18日、第一声で支援者らに声を上げた。訴えの大半は中貝氏の市政運営の批判。知名度アップに力点を置いたが、地元市議は「知名度の低さがプラスに働いた」とみる。中貝氏の4期16年が評価される「信任投票」の形になり、批判票が関貫氏に流れた。

 「(政策の)突出部分が目立ち、市民の日々の暮らしとのギャップを埋める努力を十分してこなかった」。25日夜、落選の知らせを受けた中貝氏は、悔しさをにじませ、苦渋の表情で敗因を語った。

「評価しない」3割

 神戸新聞社が実施した出口調査(1494人回答)では、演劇のまちづくりを「評価する」人は32・6%。これに対し「評価しない」(29・6%)と「よく分からない」(36・5%)が計66・1%に上り、国内外から注目される目玉施策でありながら、足元の市民の理解を得られていなかった。「置いてけぼりの気分だった」とこぼす市民もいた。

 新市長となる関貫氏は26日、今後は市の演劇への関与を減らしていく意向を表明。秋に予定する豊岡演劇祭は「市の負担を減らせる形を見いだしていきたい」と述べ、演劇的手法を導入する教育方針の見直しも明言。「これからは演劇中心ではなく、演劇“も”あるまちを目指す」とした。

 豊岡市では今春、国公立大学で初めて演劇やダンスが本格的に学べる芸術文化観光専門職大学が開学。2019年には劇作家平田オリザさんが移住し、主宰する劇団「青年団」も市内に拠点を移した。

 新市長の「演劇のまちはいらない」との発言の波紋は大きく、豊岡で演劇を学ぶために全国から集まった大学生たちの気持ちを心配する声もある。

「争点化つらい」

 「青年団」のメンバーは「争点になってつらいが、これが現実だと思って受け止める。まちづくりに貢献したいとの思いで移り住んできた志は変わらず、できることを続けたい」と話した。昨年、本格化したもののコロナ禍の中で規模を縮小した豊岡演劇祭には、延べ約4700人が来場し、宿泊など推計で約7500万円の経済効果があった。

 劇場近くに住む演劇ファンの中田裕美子さんは「まったく人がいなかった駅前に若い人たちの姿が見えるようになり、にぎわいを喜んでいたところだった」と今後の不安を口にした。

 井戸敏三知事は26日の会見で「選挙中は極端な対立議論になりがちだ。演劇を使ったまちづくりが争点になったとしても、今までの積み上げや経緯を無視することは豊岡市民も是としないのでは」と指摘。同市に新設した大学への影響について「豊岡市からは複数の項目で大学を支援すると言われている。実行いただくべく、十分理解を求めたい」と述べた。(石川 翠)

 

天気(9月7日)

  • 34℃
  • 27℃
  • 20%

  • 36℃
  • 24℃
  • 40%

  • 35℃
  • 26℃
  • 20%

  • 35℃
  • 25℃
  • 30%

お知らせ