地域の自然環境を生かし、経済活性化を目指すプロジェクトが、兵庫県丹波篠山市の古市地区で始まる。立ち上げたのは、U、Iターンで丹波地域に定住した有志6人。第1弾として、京阪神からの参加者と酒米を栽培し、地元酒造会社が日本酒に加工する「6次産業化」に取り組む。(川村岳也)
プロジェクト名は「ミチのムコウ」。古市地区で農園を経営する吉良佳晃さん(37)がリーダーを務める。吉良さんは29歳で京都市の化学メーカーを辞め、古市地区にある実家の農園を継いだ。
吉良さんによると、少子高齢化が進む古市地区は、市内のほかの地域より耕作面積が少なく、農業経営が成り立ちにくいという。そのため、担い手不足が深刻化し、山林も放置され、獣害の原因にもなっているという。
農園を継いだ当時から問題意識があったという吉良さん。森林資源などを活用して里山を守り、環境再生につなげつつ、地元経済も回そうとプロジェクトを企画。「未知」のさらに先の「道」の「向こうに」との思いを込め、「ミチのムコウ」と名付けた。
吉良さんは、同市内での起業を支援する「篠山イノベーターズスクール」に参加。Iターンしてきた人たちにプロジェクトの趣旨を説明すると、市の地域再生協働員や同スクールのコーディネーターら5人が賛同した。
第1弾の酒米作りは、地元の高齢者たちが扱いに困っていた水田を活用。吉良さんが計約3千平方メートルを借り受けた。
2月下旬、会員制交流サイト(SNS)を使い、参加者を募ったところ、主に京阪神から約80グループの申し込みがあった。参加者は田植えや稲刈りを体験しながら、無農薬または農薬などを減らす「特別栽培」で酒米を育てる。収穫後は狩場一酒造(同市波賀野)が加工した発泡性の特別純米酒がプレゼントされる。生き物調査や酒蔵見学などもある。
プロジェクトではほかにも、ジビエの解体見学や、伐採した木材を使った家具作りなども構想中。吉良さんは「農作業を楽しんでもらいながら、みんなで新しい里山像を見つけていきたい」と話している。
参加料1口3万円。個人も可。同プロジェクトウェブサイトから申し込む。