和紙と墨を用いた現代アートで知られる美術家、藤原志保さん(78)=兵庫県丹波篠山市=が、台北市にある画廊「ホワイトストーン・ギャラリー・タイペイ」で作品展「弄墨(ろうぼく)」を開いている。台湾では初の個展。新型コロナウイルスの影響で会場には立てなかったが、現地の反応は好評といい、「台湾には墨の文化があり、作品をよく理解してもらえたのでは」と喜んでいる。(堀井正純)
長年、和紙と墨という「素材そのもの」の表現の可能性を追求してきた。折り畳み、しわをつけた和紙を墨へ浸し、乾燥させ、展開する。しわや凹凸による複雑な陰影や濃淡が生まれる。同様の手法で、立体的なオブジェも制作する。
今回は新作約30点を出展。台北の鑑賞者らからは「パワフルでエレガント」「オリジナリティーがある」などの反響があったという。
西宮市生まれの丹波篠山市育ち。伝統的な水墨画を手がけていたが、30代後半から墨による抽象画に挑戦。独自の世界を開拓し、東京やパリ、ニューヨーク、オーストラリアのパースなどで個展を開いてきた。作品は東京国立近代美術館や兵庫県立美術館などに収蔵されている。
神戸時代、阪神・淡路大震災でアトリエが全壊。三田市に移り、2005年から丹波篠山市で工房を構える。65歳で退職するまで、看護師をしながら制作。画家だった祖父の「売り絵を描きたくなかったら、別に仕事を持て」との言葉に従った。「患者の死に立ち会うことももちろんあった」といい、「生と死」への思いを作品の根底に秘める。
素材は土佐や越前など各地の和紙と中国の松煙墨(しょうえんぼく)。「これからも墨と紙の間で生まれる現象を作品にし、海外でも発表を続けたい」と話している。
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