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ウクライナの避難者、里山でひとときの安らぎを 農家が稲刈り体験に招待、一緒に昼食も 丹波

2022/09/29 05:30

 ロシアのウクライナ侵攻で日本に避難してきたウクライナの人たちが、兵庫県丹波市内で稲刈りを体験した。避難者支援に取り組む非政府組織(NGO)「CODE(コード)海外災害援助市民センター」(神戸市兵庫区)を介して、地元農家らが招いた。心身に疲労のたまる異国暮らしが長期化する中、避難者たちは里山でひとときの安らぎを得た。(那谷享平)

 実りの季節を迎えた丹波市市島町北奥の山あい。有機栽培の田んぼでこうべを垂れる稲を、親子連れや地元農家ら約30人が鎌で刈り取っていく。「あ、カマキリ。ウクライナにもいる?」「います。もっと小さい」。日本語、英語、そしてウクライナ語を交えつつも、会話は弾む。

 24日にあった稲刈りは、農業を通した都市部との交流に取り組む地元グループ「ムラとマチの奥丹波」が主催。ウクライナ出身の5世帯7人を招待した。うち5人が、侵攻後に日本に避難した人たちだ。

 神戸で暮らすビタ・コザチェンコさん(35)もその一人。4月に娘(6)と来日した。夫はウクライナ中部ジトーミルに残り、エンジニアの仕事を続けているという。

 「戦争が始まった時はとても恐ろしく、毎日クローゼットの中で寝ていた。今は(ジトーミルの戦況は)大丈夫だが、夫は『日本にとどまっているべきだ』と言っている。会いたいが、状況を見守るしかない」

 異国で働きながらの「ワンオペ育児」。戦争は終わりが見えず、疲労は増している。それでも稲刈りの間は表情は明るく、「いい運動になる」と汗を拭った。娘もコードの学生ボランティアらと一緒に稲を束ねた。

 収穫した稲を干し終わると、一同は近くの工房で、昼食のおにぎりや焼きそばを作った。「ムラとマチの奥丹波」のメンバーで、稲を育てた農家の山本眞司さん(65)=丹波市=は「海外の人を招いたのは初めて。楽しそうで良かった」と喜んでいた。

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 2020年に発足した「ムラとマチの奥丹波」は、都市部の住民との交流行事を定期的に開催。加えて、市場に出回らない規格外野菜を外国人らに無償で届けるコードの活動「MOTTAINAI(もったいない)やさい便」にも協力している。日本にいるウクライナの人たちの食卓にも、北奥地区産の野菜が並ぶ。

 丹波に招待するきっかけは8月末。コードが神戸市須磨区内で避難者たちと開いたバーベキューだった。

 参加していた山本さんら「ムラとマチの奥丹波」のメンバーが、ウクライナの人たちに「ぜひ丹波に」と声をかけた。ウクライナは世界有数の穀倉地帯。避難者の中には農業に親しんでいた人もおり、「日本の農村に行きたい」との声が上がり、実現した。

 コード事務局長の吉椿雅道さん(54)は「日本人だけでなく、お互いに知らなかったウクライナの人同士が交流し、つながりができることが大切。野菜を届けてくれる人たちと出会う良い機会にもなった」と話す。

 「ムラとマチの奥丹波」のメンバーで、野菜を神戸に車で運ぶボランティアを続ける造園業の山本健一さん(79)=同県たつの市=は「慣れない環境で孤立させないためにも、定期的に催しを開いて招待できれば」と意気込んでいた。

 コードは活動支援金を募っている。郵便振替00930-0-330579。加入者名は「CODE」。通信欄に「もったいない野菜」や「ウクライナ支援」と記す。コードTEL078・578・7744

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